カツ丼小僧
「はい、……
それでは、紀州のドン・ファン、野崎幸助さんのダイナミック人生、………。
前回は強盗に襲われ、左足の付け根をナイフで刺され、
850万円の札束が入っていたバッグを奪い取られたところまででしたね、………。
その続きを、どうぞ、………。」
アントニオ猪木
「1、2、3、始める、ダァァ~~~~~~~~ッ、」
野崎幸助
「事件からひと月ほどして、犯人は逮捕されました。
30代の山口組系の暴力団員で、やはり私とは一面識もない男でした、………。
この男は、私の会社で働いていた従業員のヒモで、
私が毎日バッグに、多額の現ナマを入れて持ち運んでいるのを知って、
襲ったというのです、………。
その従業員も、街を歩けば男たちが振り向くような美人でしたが、
会社には、いろんなタイプの美人を採用しており、
彼女は、私の好きなタイプとは違っていました、………。
彼女を口説いたこともなく、私との間にトラブルはありませんでした。
まさか彼女がヒモの男と組んで、私を裏切るなどとは、
想像もしていなかったのです、………。
容姿にばかり目が行き、人を見る目がなかった私の失敗です。
今でも、足の付け根には、その時の傷痕がくっきりと残っております。
その傷を見るたびに、自分の至らなさを反省する、………
と言えば、もっともらしいのですが、実際のところは、
エッチを続けていけるように、金玉直撃を避けてくださったのだと、
神様に感謝しているのですから、我ながら呆れてしまいます。 」
一同
「わははははは。」
カツ丼小僧
「でも、野崎さん、……僕と発想が似ていますね、………。
『神』を出してくるところなんか特に、………。
僕もいつも、そういう発想なんですよ、………。
学生の頃、よく読んでいた、竹村健一さんの『逆転の発想』です、………。
悪い事が自分に起こっても、角度を変えて逆の解釈をすると、
案外、自分にとって結果的に良い事であったんじゃないか、……という考えです。
人と待ち合わせの約束をして、約束の時間を過ぎても、いつまでたっても
相手がこない、………。
イライラするけど、その待っている間に、大好きな本を読んでいればいいじゃないか、
そうすれば、待たされたことにも腹がたたなくなるし、自分にとっても、
有意義な時間となる、………というような内容でした、………。」
マツコ・デラックス
「そうよ、……
なんでも自分の都合のいいように、頭を切り替えちゃえばいいのよ、………。」
木村拓哉
「そんなことしてたら、何も悩みがなくなって、ただのバカになるよ。」
一同
「わははははは。」
カツ丼小僧
「それにしても若いころは、異常なほど自己啓発本を読んでいたなぁ、………。
謝世輝、竹村健一、藤本義一、デール・カーネギー、ナポレオン・ヒル、………
あまりそういった本ばかり読んでいたので、親に咎められたことがある、………。
大きな夢の中に生きていたんだ、………
自己啓発本は、今でも、たまに読むけどね、………。
雑誌では、『BIG tomorrow(ビッグトゥモロゥ)』、とかね、………。
54になったけど、まだ夢は殆ど叶っていない、………。辛い、……。
でも、夢が叶っていないからこそ、今でも夢を見ていられる、………。」
柴門ふみ
「ふふふ、……
それこそ、逆転の発想ですね、カツ丼小僧さん、………。」
カツ丼小僧
「そうです、……。
頭の中はそのように訓練されているから、どんな不幸も、なんとか凌いでいけます。
病気も、目が悪いのも、みんな、………。
体が悪いからこそ、『金剛超人』になろうという発想も浮かんできたわけです、……。
もし、自分が普通に健康体であったならば、ここまでの執着はなかったと思います。
あ、……野崎さん、……話の腰を折ってすいません、………。
また、脱線するといけない、………。どうぞ、続けてください、………。」
野崎幸助
「それでは、続けます、………。
いつも元気にエッチのことを考えて、ぴんぴんしている能天気な私ですが、
命を落とすようなピンチを、何回か経験しています。
交通事故や強盗事件も、それらのひとつですが、
60代になる寸前にも、大きなピンチがありました、………。
小柄ですが、健康・性欲に自信があった私は、
日課の高級クラブ通いをしておりました、………。
早朝のティッシュ配りをして、金貸しの書類審査や面接を終えると、
また夕方の、ティッシュ配りへ、………。それが終わると、夜毎のクラブ通いですから、
体はいくつあっても足りない毎日でした、………。
食事に気を遣うということもなく、相変わらず、うなぎ屋や天ぷら屋に通ったり、
同伴出勤のホステスの求めに応じて、高級ステーキ屋やフレンチレストランで
食事をしてから、クラブで酒を飲んでいたのです。
「社長、野菜も食べないと、体に悪いですよ。」
馴染みのホステスは、言います。
テーブルの上にはキュウリやセロリ、ニンジンを洒落たグラスに入れた
野菜スティックがありますが、手を伸ばすこともしません。
メロンやイチゴなどの、フルーツの盛り合わせも同様です。
どうせクラブ側が、売り上げを立てるためのアイテムだと、バカにしていました。
「オレの栄養の源は、ビールと綺麗な姉ちゃんだよ。」
今でも、時々このようにうそぶく方がいますけど、当時の私は本気でそう思い、
自分の体は大丈夫なのだと、高(たか)をくくっていました。
時間もないので、健康診断なぞ受けたこともありませんし、
それでも、何の心配もしていなかったのです、………。 」
カツ丼小僧
「あ、……それなら僕と同じだ、………。
僕も、健康診断を受けたことがありません。病院が嫌いなもんで、………。」
西城秀樹
「そうだよ、……いけないなぁ、……。
気を付けないと、僕みたいに脳梗塞になってからじゃ、………。
ね、……おそらく、そういう話なんでしょ、………。」
カツ丼小僧
「あ、……秀樹さん、……。今日も来てくれていたんですか、………。
ありがとうございます、………。リハビリの方は、………? 」
西城秀樹
「うん、……その甲斐あって、かなり、回復してきた、………。
去年の10月に、中野サンプラザで行われた、ライヴコンサートでは、
ちょっと辛かったけど、なんとか完全熱唱しました、………。
観客の皆さんから、『秀樹、がんばれ。』という、温かい声援を頂きました。」
郷ひろみ
「秀樹、………。ゴーだ、……。」
野口五郎
「おでき、…… いや、秀樹、………。」
西城秀樹
「ふふふ、……おまえら、………。」
一同
「わははははっ、………。
秀樹っ、頑張れよっ、! ! 」
西城秀樹
「………ありがとう。」
野崎幸助
「では、続けます、………。
その晩は、以前から狙っていたホステスを口説きましたが、
どうしても首を縦に振ってくれません、………。
悔しかったのですが、翌朝のティッシュ配りもあるので諦めて、
ほろ酔い加減で歩き始めました。
この日の宿泊先である帝国ホテルまでは、5分少々の距離です。
ホテルに着くと、そのままベッドに倒れ込みました。
どのくらい寝ていたのか、記憶が定かではないのですが、
ふと目が覚めて、体を動かそうとしても、力が入りません、………。
頭に霞がかかったようで、脳が締め付けられる痛みもあります。
私はベッド脇の電話で、フロントに助けを求めました。
それすらも舌がもつれるので、大変でした。
すると、ホテルに常駐していたお医者様が飛んできてくれ、
私の症状を見るなり、救急車の手配をしてくれたのです。
「聖路加病院へ、………。」
意識が薄れる中で私は、交通事故のときに運ばれた
病院の名を口にしたらしいのですが、その記憶も定かではありません、………。」
カツ丼小僧
「脳梗塞なら、僕も怖い、……。
本来なら明日にでも、そうなってもおかしくはない身だ、………。
自分の運命と超能力の完成を信じて、前向きに生きていくしかない、………。」
長嶋茂雄
「……………。」
西城秀樹
「……………。」
カツ丼小僧
「長嶋茂雄さんや西城秀樹さんには、大変、申し訳ないんですが、
晩年、脳梗塞にあって体が不自由になる人というのは、大体、若いころに、
自分の体を、ダイナミックに動かしていた人が多いんです、………。
つまり、あまり自分の体を使いすぎると、その使った部位の使用量期間が
早いうちに、切れてしまうというわけです、………。
わかりやすく言えば、乾電池の電池エネルギーを、早いうちに
使い切ってしまった、ということなんです、………。
ですから、表向きには、長嶋さんや西城さんの脳梗塞の原因が、
サウナが好きで、サウナ風呂に何度も入ったのに、水を飲まなかったから、………
という事になっていますが、実はそうではなく、若いうちからパフォーマンスなどで、
しきりに、必要以上に、体を動かしていたからなんです、………。
そこで使い切ってしまった、………。 」
長嶋茂雄・西城秀樹
「……………。」
カツ丼小僧
「あまり若いうちに体を動かしてばかりいると、一生分、持たないんです。
使えば使うほど、その部位が鍛えられてよくなるか、と言えばそうではなく、
使った分だけ、ただ消耗していくだけなんです、………。
僕も現在では、あまり足を使わなくなりました、………。
若いうちに使いすぎて、その使用量期間をオーバーしてしまったからだと思います。
若いころは歩くことが大好きで、ミニマップ片手に、
東京・神奈川を1日中、足がクタクタになるまで歩き回っていましたが、
今は自宅マンション周辺を、少しウロチョロするだけです。
一生を通じて、その総量が決まっているのです、………。」
長嶋茂雄
「私も西城さんも、非常に派手でダイナミックな動きが、特徴でした、………。」
西城秀樹
「うん、……。」
カツ丼小僧
「あ、……野崎さん、すいません、………。続きを、お願いします、………。」
野崎幸助
「私の肉棒は、どんなに使っても、なぜか、衰えを知りません、………。
超パワフル・健康チ○ポです、………。
ハッピー、ハッピー、とっても、ハッピー、………。
では、続けます、………。
「社長、ここまできたら、私を自由にしていいのよ。」
白い薄着のドレスをまとった美女が、
小川の向こうで、艶然と微笑み手招きをしています、………。
据え膳食わぬは男の恥と、助平な頭をめぐらして、川に入ろうとしました。
「私は、どうかしら、? 」
振り向くと、胸がパンと張ったナイスボディにロングヘアーが似合う、
背の高い美女が、立っております。こちらも薄着で、かつ完璧に私の好みです。
川の向こう側にいる美女も捨てがたいのですが、
私は、本能の赴くままに、ナイスボディの女性を選ぶことにしたのです。
私の記憶が蘇ったのは、丸一日経ってからでした。
救急車に乗せられた私は、聖路加病院がいっぱいだったため、
西葛西の森山記念病院に運ばれ、緊急手術を受けたのです、………。
診断は脳梗塞でしたが、ホテルや病院の迅速な対応により、
軽い言語障害が残っただけで、手足が動かなくなるような、
重篤な後遺症もありませんでした、………。
もし、あの晩、狙っていたクラブのホステスを、お持ち帰りできていれば、
ベッドの上で、脳梗塞に襲われていたかもしれません。
「腹上死やったから、社長も本望やったろうな。」
私の葬儀で、参列者たちに滅茶苦茶嗤われている様子が浮かんできます。
腹上死というのは、皆さんが想像しているよりも、はるかに多いと聞き及んでおります。
世間体を憚(はばか)って、家族は死因を腹上死とは明らかにせず、
心臓疾患などにしているらしいのです。」
一同
「わははははは、……。ある、ある、……いかにも、ありそうだ。」
野崎幸助
「本音では、そういう最後も悪くないと思いますが、
まだまだシャバで、数々の美しい女性たちとのエッチを楽しみたいので、
もう少し神様には、ご猶予くださるよう、お願いしたいものです。」
一同
「わははははは。神は寛大です。心配ご無用。」
出川哲朗
「ぎゃははははっ、……。」
松本人志
「なにがそんなにおかしいのか、ようわからへんわ、………。」
浜田雅功
「おいっ、おまえも一緒に笑ったれや、………。」
野崎幸助
「それにしても、無意識のうちに見た夢で、もし、川の向こう側にいた女性を
選んでいたら、私は三途の川を渡っていたような気がします。
そんなときでもナイスボディの娘を選んだ助平根性が、
私の命を救っていてくれたのかも、しれません、………。」
カツ丼小僧
「その、三途の川の夢から、かれこれ、17年ぐらい経っていますけど、
それもやはり、神が、………。」
野崎幸助
「ええ、……それから今までの17年は、とっても貴重な時間を過ごしています。
神様、ありがとう、………。」
小池栄子
「野崎さんとカツ丼さん、……
なんか、性格が、よく似ていますね、………。」
堀江貴文
「僕の感性には、合わない、………。」
カツ丼小僧
「それでは、野崎さん、……。
そろそろ時間が近づいてきましたので、ここで一気にラストスパート、
お願いします、………。」
野崎幸助
「はい、……それでは、ラストまで、一気に行きます、………。
「先生、ここの看護婦さんは、お美しいようですね。」
脳梗塞からのリハビリのため、約1ヵ月入院していた私は、
お医者様と一緒に、看護婦さんが点滴交換に来るたびに、
そんなことを言っておりました、………。
看護婦さんたちの間でも、私のこうした発言は、
一種の挨拶みたいなものだと、思われていたようです、………。
「社長、今度は目の検査をしなければなりませんね。」
看護婦さんが部屋を出ていくと、お医者様がこう囁いて苦笑しました。
「目のほうは大丈夫ですよ。褒めるのはタダですから。
それよりも、エッチの方は大丈夫でしょうか、………? 」
エッチをするために、生きているような私ですから、
入院中もベッドの中で考えるのは、いつになったらエッチが出来るか。
そればかりです、………。
「もうそんなことを考えているの、?
社長の脳を見たいね。『助平ジジイの脳内』という研究論文でも書こうかな、? 」
呆れたように、先生は笑っています。
「そりゃあ、筆おろしをしてから、
毎日エッチすることばかり、考えて生きてきましたから、………。
生きがいがなくなったら、私の人生は終わりですよ。」
病院に、笑い声が広がりました。
脳梗塞になって以降、私は聖路加国際病院で、
毎年人間ドックを受けるようになりました、………。
かなり本格的な人間ドックで、1週間の泊りがけです。
こうして70歳を過ぎても、元気でいられるのは、
毎年、検査を受けるようになったからかもしれません、………。
そう考えたら、脳梗塞や交通事故にも、意味はあったというものです。
聖路加で、人間ドックを受けるときは個室に入るのですが、
別に体が悪いわけではないので、暇を持てあましています。
そこで、いつも検査が終わった夕方には、お医者様の許可をいただいて、
タクシーで、銀座4丁目あたりに出掛けます、………。
検査期間中ですから、クラブにはいきません。
ただ、ブラブラと銀座の街を歩くだけです、………。
毎年、同じようなことをしていますので、時代の移り変わりを
肌で感じることも、あります、………。
ここ1~2年は、中国人観光客が増えて驚かされますが、
『世界の銀座』と呼ばれるだけの気品と落ち着きは、まだ残っているように感じます。
商売のことや、女性を求めて走り回っている私ですが、
こうして、じっくりと銀座の街並みを眺めるのが、至福の時間となっています。」
カツ丼小僧
「はい、野崎さん、……ありがとうございました、………。
不幸な中にも、ユーモアいっぱいの、笑いを誘うお話でした、………。
さて、今日は、これで終わりです、………。
おそらく次回が、最終回のお話になると思います。
皆さんも、楽しみにしながら、期待して待っていましょう、………。
期待しすぎて、寝小便などを漏らさぬように、………。」
一同
「いやだ~~~、カツ丼さん、………
私たち、もういい大人ですよ~~~~。
そんなこと、あるわけないじゃないですか~~~~~。」
カツ丼小僧
「僕は5年前の、49歳の時、1度だけ寝小便を垂れたことがあります、………。」
一同
「えぇ~~~~~~~~~っ、???!!! 」
小倉智昭
「さすが、小僧っ、……。」
カツ丼小僧
「それでは、皆さん、……… さようなら~~~~~。
シー、ユー、アゲイン、………グッド、ラ~~~~~クッ、………。」
一同
「グ、グッド、ラ~~~~~クッ、………。」