カツ丼小僧と有名人のドスケベ座談会 642

カツ丼小僧

「わははははは、………。

 昨日は、どーも、どーも、……いや、どーも、………。

 どわははははは。 どわははははは。 どわははははは。

 

 いや、特に最後の方は、本当に面白かった、……… どわははははは。

 あまりに出来すぎていて、気味が悪い、………どわははははは。 どわははははは。 

 いや、参った、参った、……… どわははははは。 どわははははは。」

 

一同

「どわははははは。 どわははははは。 どわははははは。」

 

小林敬

「うぬっ、……き、きさまらっ、お、俺を侮辱する気かっ、………。

 俺は、あんな占いなど信じやせんぞっ、………。

 これから必ず人生を盛り返して、汚名を返上し、

 一旗揚げてやるから、そのつもりで、みんなで見ていろっ、………。

 俺は、堀之内のような腰砕けとは、まったく違うぞっ、………。」

 

カツ丼小僧

「ええ、……わかってます、わかってます、………。

 『毒害宿』は、変化に強くて、粘りがありますんで、

 ひょっとすると、これからの一発逆転の成功も、十分可能でしょう、………。 」

 

小林敬

「ほ、……。 そ、……そうか、……?

 一発逆転の可能性もある、………? そ、そうか、……そうなのか、………? 

 おほほほほほ、……そうか、そうか、………。

 いやいや、………それは、それは、……わははははは、……たいした占いだ、………。

 

 よしよし、その占いの言う事を信じよう、………。

 そうさ、……俺は、まだまだ、これからなんだ、………。

 こんな中途半端な状態で、人生終わってたまるかってんだよっ、………。

 

 うん、よしよし、……いい話を聞いた、………。

 カツ丼さん、……俺、あんた、一番好きなタイプの人間だ、………。

 今度、時間があったら、宿曜占星術の話、……もっと聞かせてくれよ、………。 」

 

カツ丼小僧

「ええ、……そうですね、………。

 今度、時間が空いた時にまた、……こちらこそ、よろしくお願いします、………。」

 

川原浩史

「俺、今度『宿曜占星術』を研究して、一儲けしてみようかな、………。」

 

堀之内九一郎

「えっ、……? な、何だって、……?

 宿曜占星術で、一儲けだって、………? そ、その話、聞かせてっ、………

 堀之内九一郎っ、……たった今、眠りから覚めましたっ、………。

 きゃうぅぅぅ~~~~~~~~~んんっっ、………。」

 

一同

「わははははは。」

 

カツ丼小僧

「そうですね、……色々、チャレンジしてみたら、いかがでしょう、………。

 まぁ、あまり無責任なことも言えませんが、………。

 

 なんといっても、宿曜占星術研究家は、僕のような素人愛好家まで含めますと、

 全国にゴマンといますからね、………。

 その人たちと競争するのは、大変ですよ、………。

 それでは、これから、松坂慶子さんの話に戻ります、………。

 

 昨日の続き、……

 2月24日公開の、映画『空海~KU・KAI~美しき王妃の謎』の話でしたね、………。

 慶子さん、お願いします、………。 」

 

松坂慶子

「はい、……。

 

 「私が演じたのは、遣唐使の一人である、阿倍仲麻呂の側室だった伯玲。

  謎解きの鍵を握る重要な人物ですが、

  仲麻呂が楊貴妃に心を奪われていたことを知りながら、彼を待ち続け、

  仲麻呂の死後も30年間、一途に想う女性です、………。

 

  まさに「永遠の愛」を体現したような人、………。

  男性なら、そんな女性と恋愛したいと思うんじゃないかしら。

  相手を尊敬していたからこそ、そこまで愛せたのでしょうね。

 

  その人の持つ痛みを、自分自身のものと同じように思える

  大切な相手になら、「永遠の愛」を抱けるのかもしれません。 」

 

カツ丼小僧

「そ、それは、まさしく、慶子さんにピッタリの役柄じゃないですか、………?

 だって、……いや、これは、あくまで僕の不徳な推測ですが、

 

 慶子さんは、今でも、もう随分前にお亡くなりになった、

 深作欣二さんや、つかこうへいさん、緒形拳さんといった人たちを

 愛し続けているんでしょうからね、………。 」

 

松坂慶子

「……………。はい、……。」

 

一同

「おぉ~~~~~~~~~っ、」

 

高内春彦

「……………。」

 

カツ丼小僧

「ほら、………ね、………。」

 

松坂慶子

「でも、その事については、あまり、………。これ以上のことは、………。

 では、続きを読みます、………。 」

 

都築響一

「続き、………。」

 

松坂慶子

「はい、……。

 

 「でも、愛は変容していきます、………。

  燃え上がるような愛から、いずれ情愛、友情に、………。

  そして包み込むような母性へと、………。

 

  時が流れても、ときめきやワクワクする気持ちを忘れないでいるには、

  一番好きなものを選択するといいと思うんです、………。

 

  だから私、ずっと「一番」を選んできたの。

  一番好きなものなら、気持ちはつづくと思いますから、………。」

   

 

カツ丼小僧

「時が流れてもワクワクするもの、………。

 一番好きなものなら、気持ちは続く、……ですか、………。

 

 僕の場合は、何だったんだろう、………?

 

 漫画は、確かに子供のころは大好きだったけど、

 20を過ぎてからは、殆ど読まなくなった、………。

 恐らく時代の流れとともに、段々と自分の体質が、

 漫画に合わなくなっていったんだろうと思う、………。

 

 赤塚不二夫さんや藤子不二雄さんのような、

 シンプルなギャグ漫画が大好きだった、………。

 見やすくって、読みやすくって、とってもよし、………。

 それは、書き手が読者の立場になって、読みやすいようにと、

 色々考えてくれているからだと思います、………。

 

 シンプル・イズ・ベスト、が僕の信条です、………。

 

 とにかく、ゴチャゴチャとセリフが多くて難しいのはダメです。

 もう、最近の漫画は、そんなのばっかし、………。

 僕のように、いささか神経衰弱症気味の人間にとっては、

 ただただ、ひたすらに、頭の中が疲れてくるだけなんですよ、………。

 

 昭和時代のバカみたいにシンプルだった、絵とアイデアが、大好きなんです。

 まぁ逆に言えば、今だったら、そのレベルじゃ雑誌には

 掲載などしてもらえないんでしょうがね、………。

 

 あ、……少し話が脇道に逸れていきそうですが、このまま続けます、………。

 

 ジョージ秋山さんの『ゴミムシくん』や、とりいかずよしさんの『トイレット博士』、

 それから、永井豪さんの『あばしり一家』『けっこう仮面』などは、

 僕にとって、夢と魅力がぎっしり詰まった、宝の山のような漫画でした。

 

 小林よしのりさんも、『東大一直線』は、本当に新鮮味があって面白かったけど、

 ちょっと、今、お描きになっている漫画は、活字が多すぎてダメです、………。

 あれでは、もう漫画とは言えませんよ、………。

 まぁ、そういう読者のための、そういう性質の漫画だと言ってしまえば、

 それまでなんだけど、………う~~~ん、……なんとかなりませんかね、………? 

 

 だって、あれだったら、実際、絵は文章に付随した

 単なる「つけたし」であって、ほとんど意味がない、………。

 活字だけで読んだ方が十分面白いとさえ思ってしまうんですが、………。

 

 また『東大一直線』みたいな、面白いやつ、描いてくださいよ、小林さん、………。

 頼んますよ、………。

 中学時代の僕は、あなたを神とさえ思っていたんですから、………。

 本当ですよ、………。

 

 昨今は学習漫画が全盛で、それはそれで構いませんが、

 やはり、絵だけでわかる、サイレント漫画のように、絵を中心とした、

 シンプルな漫画が、僕にとっては一番なんですよ~~~~。

 ゴロッと寝転がって、うたた寝しながらでも、気軽に読めるもの、………。

 

 ねっ、……。

 そうでしょ、いしかわさん、……ね、そうなんでしょ、………。

 いしかわさんっ、 ねぇったらっ、………。」

 

いしかわじゅん

「う、うん、……まぁ、そうだな、………。

 君のいう事にも、一理はあるな、………。

 確かに、君の言うとおりかもしれない、………。

 

 柴門ふみの漫画『恋する妻たち』(女性セブン・小学館)は、

 初期のころの彼女の作品と比べると、随分セリフが少なくなっていて、

 簡潔にまとめてあるんで、実に読みやすい、………。

 これはいいことだと思うよ、……… 絶賛に値する、………。」

 

柴門ふみ

「い、……いしかわさん、………。」

 

岡田斗司夫

「いしかわさん、………。」

 

カツ丼小僧   

   セ、セ、セ、セリフの多い漫画は、もうやめろぉぉ~~~~~~~~っ、

 

   もう、たくさんだぁぁ~~~~~~~~~~っ、

 

   うわぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~っ、っ、っ、

 

 

 と、とにかく頭の弱い僕にとっては、漫画は、わかりやすいのが一番です、………。

 いや、漫画は、わかりやすくなければなりません、………。

 はたして、このような時代の流れの風潮というのは、進化したというのか、

 それとも退化したというのか、よくわかりませんが、今後、赤塚不二夫さんレベルの

 漫画は、もう商業雑誌に掲載されることもないんでしょう、………。 」

 

 

一同松坂慶子

「……………。」 

 

カツ丼小僧

「すいません、……いつものように話がどんどん逸れていきますが、

 もう少しだけ、言わせてください、………。

 

 それでね、僕にとって一番好きなもの、………

 時が流れても、ときめきやワクワクするものを忘れないでいるもの、………

 

 いや、……それは何かと、考えてみたらね、………。

 やはり、女体の官能エロスなんですよ、………すなわち、SM、………。

 わははははは。やはり、漫画からSMに変遷していったのは、

 僕にとって、必然的な流れだったのか、………?

 

 これも皆、20代のころに読んだ、

 三条友美さんのSM帝国残忍劇画、『少女菜美』のおかげです。

 僕の人生を中途から、ものの見事に、全てひっくり返してくれました、………。

 

 でも、どのみち、漫画では大成することもなかったろうし、

 こっちのルートを選んで、正解だったんじゃないのかな、………? 

 

 ああ、……あの本は、今、書店には出ていないし、

 ネットから手にすることが、可能なんだろうか、………?

 それとも、永遠に見ることができないのか、………? 

 

 夢よ、…… 官能よ、…… 若さの屹立よ、…… 再び、………。」

 

 

 

一同松坂慶子

「……………。」

 

カツ丼小僧

「あ、……これで、全てが終わりました、………。

 あ~~~、せいせいした、………。

 それでは、慶子さん、……続きをお願いします、………。」

 

松坂慶子

「は、……はい、……。

 

 「今年は、大河ドラマ『西郷(せご)どん』で、

  西郷隆盛の母、満佐子役を務めています、………。

  そういえば、『空海』のチェン・カイコー監督は、

  映画『蒲田行進曲』を見て、私のことを知ってくださったそうなのです。

 

  大河では、その『蒲田行進曲』トリオの、風間杜夫さん、平田満さんの

  お二方と、35年ぶりに共演しているんですよ、………。

  不思議な流れを感じますね、………。

 

  たくさんのご縁と、物作りの楽しさを再発見できたことで、

  今は、「女優をつづけよう、未知の出会いを楽しみに、ますます頑張ろう!」

  と、思っています、………。 」 

 

 ………以上、……読み終わりました、………。」

 

   

   会場内に、割れんばかりの、大きな拍手が鳴り響いた、………。

 

 

カツ丼小僧

「はい、……慶子さん、……お疲れ様でした、………。

 ありがとうございました、………。

 どうぞ、その場に座ってゆっくり、お休みになってください、………。

 用意しておいた、冷えたビールでも飲みながら、………。」

 

松坂慶子

「あ、あら、そうなんですか、……?

 私、余力を持て余しすぎて、まだ、何かやってみたい気分なんですけど、………。

 カツ丼小僧さん、……何か、私にやってほしい事は、ございませんか、? 」

 

カツ丼小僧

「あ、……そ、そうですか、………?

 何か、ご注文させてもらって、いいんですね、………?

 

 そうだなぁ、………♪『愛の水中花』は、もう歌ってもらったし、………。

 そうだ、閃いたぞっ、! !

 

 こ、今度は、映画『蒲田行進曲』の主題歌を、皆さんたちの前で

 歌ってもらいたいんですが、……いかがでしょうか、………? 

 お引き受け願えますか、……?」

 

松坂慶子

「え、……?

 か、蒲田行進曲の主題歌を、………ですか、……?

 は、はい、……いいですわよ、……もちろん、喜んで、お引き受けしますわ、……。」

 

一同

「わぁぁ~~~~~~っ、……… 」

 

松坂慶子

「あのう、……この前、♪『愛の水中花』を歌った時と同じステージで

 歌えば、よろしいんですね、………。」

 

カツ丼小僧

「ええ、……そうですね、………あちら、………。」

 

 

   カツ丼小僧が、手で指し示した方角を見ると、

   そこにはもう、歌うためのステージやセットが用意されていた、………。

   だが、それは、『蒲田行進曲』のセットではなく、

   フランスのパリ、モンマルトルにある、ムーラン・ルージュの

   造形セットだった

 

 

松坂慶子

「まぁ、……赤い風車の建物が、中央に、………。」

 

カツ丼小僧

「ええ、……ちょっと、アンバランスな感じの、

 変わった趣向でやってみたくなるのが、僕の性分でして、………。

 本当は、♪『監獄ロック』風なセットも、良かったと思ったんですが、………。」

 

松坂慶子

「まぁ~~、……それじゃぁ、カツ丼さん、………

 最初から私に、今回『蒲田行進曲』を歌わせることを決めていたんじゃないの、? 」

 

カツ丼小僧

「ええ、……すいません、………。

 その通りです、………実は、すべて計画済みなんです、………。

 でも、松坂慶子さんは、プロ意識の強い方なんで、突然の依頼でも、

 まず間違いなく、引き受けてくれるだろうと、確信しておりました、………。

 ね、? 本当は、依頼を受けたら、断りきれない性分なんでしょう、? 」

 

松坂慶子

「ええ、……でも、簡単に引き受けちゃったのは、いいんですけど、………

 もう、長い事、歌ってないから、……ちゃんと歌詞、覚えているかなぁ~~~?

 うふふっ、ちょっと自信ない、………。」

 

カツ丼小僧

「いえいえ、……そこは大丈夫です、………

 実は、今回、慶子さんが1人で、この歌を歌うのは、なんとなく、

 心もとない気分になるのではないかと思って、慶子さんの隣で、一緒に歌ってくれる、

 2人のゲストを、ここにお招きしているんです、………。」

 

一同松坂慶子

「えぇ~~~~~~~~~~っ、???!!! 」

 

カツ丼小僧

「へへへ、………そんなに、ビックリしないで下さいよ、………。

 それでは、今、お呼びします、………。

 

    

     銀ちゃ~~~~ん、 ヤス~~~~~~っ、

 

 

   カツ丼小僧が、片手の平を口元に添えて、大声でそう叫ぶと、

   部屋の襖が、がらりと開いて、帽子にサングラス、ハッピ姿の

   派手目の格好をした男と、もう一人は、地味な姿の工員風の背広を着た男が、

   ちょっと、照れくさそうに部屋の中に入ってきた、………。

 

   1982年(昭和57年)に公開の映画、『蒲田行進曲』で、

   松坂慶子(小夏)と共演し、

   銀四郎という小夏の恋人役を演じた、風間杜夫、………

   そして、売れない大部屋俳優であり、

   銀四郎の舎弟的な役割を演じた、平田満だった、………

 

 

一同

「おぉ~~~~~~~~~~っ、」

 

松坂慶子

「か、風間さん、……平田さん、………。」 

 

風間杜夫

「よう、……小夏、………。

 おめぇを一番に愛しているのは、この俺だってことを忘れるなよ、」

 

平田満

「小夏ちゃん、……大部屋俳優の、こんな俺でも、よかったら、………。」

 

一同

「わははははは。」

 

 

   場内の者たちの笑いを誘いながら、2人は『蒲田行進曲』の役柄そのままの

   キャラクターとコスチュームで、おどけた演技をして見せた。

   さすがの松坂慶子も、あまりの意外な展開に、少しビックリしたようだ。

 

 

カツ丼小僧

「いやいや、今日は、どうも、どうも、お忙しいところ、お呼びたてして、

 どうもすいません、………。でも、これで、エンディングが、華やかになる。」

 

風間杜夫

「いえいえ、……松坂慶子さんのためとあらば、我々は、いつ何時だって、

 まっしぐらに駆けつけますよ、……ねぇ、平田さん、………。」

 

平田満

「ええ、……もちろんです、………。小夏ちゃんのためならば、………。」

 

風間杜夫

「おいおい、お前、もう、いいかげん役柄から抜け出せよ、………。」

 

平田満

「へへへ、……銀ちゃん、……ごめん、………。」

 

風間杜夫

「……………。」

 

一同

「わははははは。」

 

松坂慶子

「風間さん、……平田さん、……今日は本当に、どうもありがとう、………。

 私のために、ワザワザ、………。

 でも、いきなりなんで、ちょっと、ビックリしちゃった、」

 

カツ丼小僧

「慶子さん、………

 風間さんと、平田さんとは、現在、NHKの大河ドラマ、

 『西郷(せご)どん』日曜 20:00~20:45 でも、共演していらっしゃるんですよね。」

 

松坂慶子

「ええ、……そうなんですよ、………。先程も言いましたけど、

 運命の巡り合わせといいましょうか、………。何かのご縁で、………。

 『蒲田行進曲』以来、実に35年ぶりで、3人が集結しました、………。」

 

カツ丼小僧

「積もる話もあるでしょうが、

 申し訳ありませんが、時間もありませんので、

 ここはすぐに歌の方の準備に、取り掛かってください、……… 」

 

久米宏

「あれっ、? 僕の『ザ・ベストテン』の司会みたい、………。」

 

黒柳徹子

「おほほほほ、………。

 あなた、そんなこと、どうだっていいじゃありませんか、………

 ちょっと、静かになさいな、………。

 さあさ、3人の歌いっぷりを、とくと、拝聴しましょうよ、………。」

 

 

   松坂慶子、風間杜夫、平田満は、幻想的なムーラン・ルージュの

   セットの前に立った、………

   中央に松坂慶子、そして、彼女を挟むようにして、両脇に、

   2人の男が、マイクを片手に立っていた、………

   映画『蒲田行進曲』の衣装、そのままの格好で、………。

 

   ♪『蒲田行進曲』主題歌の、イントロが流れてきた、………

 

 

    

    ♪蒲田行進曲

 

    

    虹の都 光の港 

 

    キネマの天地

 

    花の姿 春の匂い 

 

    あふるる処

 

    カメラの眼に映る 

 

    仮染めの恋にさえ

 

    青春もゆる 生命はおどる

 

    キネマの天地

 

    胸を去らぬ 想い出ゆかし

 

    キネマの世界

 

    セットの花と 輝くスター

 

    微笑む処

 

    瞳の奥深く 焼付けた面影の

 

    消えて結ぶ 幻の国

 

    キネマの世界

 

    春の蒲田 花咲く蒲田

 

    キネマの都

 

    空に描く 白日の夢

 

    あふるる処

 

    輝く緑さえ とこしえの憧れに

 

    生くる蒲田 若き蒲田 

 

    キネマの都

 

 

 

   ………3人が歌い終えると、拍手が鳴り響き、暫くはやむことがない程までに、

   場内の者たちの心は、エクスタシーに達していた、………。

   誰もが、この生のステージの音楽を聴いているという実感に酔いしれていた。

 

   実は、松坂慶子本人も、………

   彼女は、歌っている間、監督の深作欣二と、脚本家のつかこうへいを

   交互に思い浮かべては、彼らの腕の中で抱かれていた、………

   ここちよい眠りにでもつくかのように、………

 

 

カツ丼小僧

「いや、……慶子さん、……風間さん、……平田さん、……

 今日は、本当にありがとうございました、………。

 ムーラン・ルージュの背景のセットで、また一味違った♪『蒲田行進曲』が

 楽しめた事だろうと、思います、………僕もきらびやかで楽しかった。」

 

風間杜夫

「よく、こんな、突拍子もない事、思いつくなぁ、………。

 僕がディレクターだったら、絶対にやらせないよ、………。

 ありえないよ、………。」

 

カツ丼小僧

「ええ、……この座談会の主催者は僕で、しかも僕は独裁者ですので、

 このような無茶もわがままも通ってしまうわけです、………。」

 

平田満

「あなたに逆らえる人はいないんですか、………? 」

 

カツ丼小僧

「いや、……逆らえる、というか、………。

 逆らう人はいないはずです、………。

 

 この座談会の内容は、もともと僕の想念内において構築されているわけですから、

 僕にとって不都合なことは、殆ど起こらないのです、………。

 もし起こっても、すぐに消えてしまう、………。

 現に、あなたたちだって、僕の招待の申し出に、

 心地よく、答えてくれたじゃないですか、………。」

 

平田満

「いや、……それは、慶子さんのために、………。」

 

カツ丼小僧

「いえ、……そうでしょうが、そういうことも、みんなひっくるめて、ですよ、………。

 まぁ、今日はもう、夜もおそくなりましたので、ここらで、お開きとします。

 平田さん、風間さん、そして慶子さん、

 今日は、本当にありがとうございました、………。

 皆さん、改めて、この3人の方に、盛大なる拍手を、お送りください、………。」

 

 

   一同は、また改めて、この偉大なる3人のスターたちに、

   盛大なる拍手を送った、………。カツ丼小僧の命じるがままに、………。