カツ丼小僧と有名人のドスケベ座談会 611

カツ丼小僧

「それでは、今日も始めます、………。

 因果応報の鉄則、………

 それは、「愛したものに愛される」、………という事です、………。

 

 人間を愛すれば、人間に愛され、お金を愛すれば、お金に愛され、

 仕事を愛すれば、仕事に愛され、健康を愛すれば、健康に愛される、………。

 

 そして、この逆も、また真なり、です、………。

 まず、この事を、しっかりと頭の中に、叩きこんでおいてください、………。

 死ぬ直前まで、忘れてはならないことです、………。」

 

ルー大柴

「私は、アイ、ライク、マネー、よっ、……… 

 決まってんじゃないっ、………。皆で、トゥギャザー買おうよっ、………。」

 

明石家さんま

「わははははは、………。

 あ、あんた、……そ、それしか、ないんか、………? 

 ヒィーーーッ、ヒィーーーーッ、つまらんなぁ、………。」

 

カツ丼小僧

「ええ、……そうですね、………

 もし皆さんが、心底、本気でお金持ちになりたいなどと思っているのなら、

 お金や、お金儲けを、微塵たりとも卑しいものだと思ってはなりません、………。

 

 よく、「お金で幸せを買う事は出来ない。」などと言う人もいて、

 確かに、それも一面においては真理では、ありましょうが、

 そのような考えの人には、大きなお金が巡って来ることはありません、………。

 

 たまさか、一時的に大金を手にするような事があっても、

 すぐに、手元から離れて行ってしまうのです、………。

 お金を愛した人に、お金が喜んで寄って来るのだと思ってください、………。」

 

川原浩史

「うん、……………。」

 

小林敬

「……………。」

 

堀之内九一郎

「あのう、………一言だけ、いいですか、………? 」

 

カツ丼小僧

「堕ちた虎は、黙ってろっ、! ! ! 」

 

堀之内九一郎

「ひっ、……… す、……すいませんっ、………。」

 

カツ丼小僧

「今、俺が大事な講義をしている時に、

 横から口を、差し挟むなっ、……… なんたる厚かましさだっ、………。

 そんな野暮な感覚だから、おまえは負け犬なんだ、………。」

 

堀之内九一郎

「……………。」

 

一同

「……………。」

 

松坂慶子

「カ、カツ丼さん、……どうしたんでしょう、………?

 今日は、いつになく厳しいわ、………。」

 

多岐川裕美

「ええ、……、相当、気が立っているようね、………。

 それだけ、真剣だって事よ、………。」

 

華子

「お母さん、……私、怖い、………。で、……でちゃう、………。ああ、…… 」

 

 

   カツ丼小僧は、部屋の中央に立ちはだかるような感じで、

   胡坐や脚を崩して座って彼の講義を聴いている者たちを、睥睨して睨みつけ、

   真一文字に固く口を結んでいた、………。

   目はつり上がり、口中からはギリギリと

   歯ぎしりの音が聞こえてくるような感じさえした。

   

   顔の表情は、真剣そのものだった、………。

   そして右手には、彼愛用の、黒い極太の一本鞭が握られていた、………。

 

   カツ丼小僧は、その一本鞭を、

   ヒュンヒュンと場内の者たち目掛けて、数回、続けざまに振り下ろした、………。

   机の上に置いてあった、番茶やビール瓶が吹き飛ばされたが、

   その鞭の一振りが、堀之内九一郎の眼鏡に当たり、それを吹き飛ばした。

 

 

堀之内九一郎

「な、……何をするんだっ、……い、痛いじゃないかッ、………。」

 

   

   堀之内九一郎は、頬に涙をこぼしながら、目元を手で押さえた。

   昨日のカツ丼小僧とは、打って変った変貌ぶりに、一同の者は呆気にとられた。

 

 

カツ丼小僧

「おいっ、……九一郎っ、………

 お前が何で結局のところ、人生の敗残者になってしまったのか、わかるかっ、………? 

 お前の分かる範囲でいいから、答えてみいっ、………。」

 

堀之内九一郎

「い、いえ、……そ、それが、………わかりません、………。

 まったく、……まったく、わからないんです、………。

 も、もう、何が何だかわからないまま、地獄が訪れて来て、………

 

 い、いきなり、天井から大きな岩が、ドーンと落ちてきたような感じで、

 急転直下、人生がひっくり返り、

 「あ~~~~っ、」という間に、乞食になってしまったんです。

 

 も、元々が、私、ゴミ屋からの出発でしたので、

 これが身分相応とも言えるのかもしれませんが、やっぱりあきらめきれません。

 過去の栄華な生活を思うと、………。

 

 カ、カツ丼小僧さん、………

 わ、私の何がいけなかったのでしょうか、……? 教えてください、………。」

 

カツ丼小僧

「ふっふっふっふっ、……… 」

 

 

   カツ丼小僧は、残忍な薄ら笑いを浮かべると、

   不様に膝まづいて、がっくりと肩を落とし、うなだれている

   堀之内九一郎の下に、ゆっくりと近づいて行った、………。

   カツ丼小僧の異様な振る舞いに、一同の者たちは凍りつき、震え始めた。

 

 

一同   

「な、? なんだ、? ……???

 昨日の思いやりのあるカツ丼小僧とは、全然、人間が違うじゃないか、………?

 どうしちゃったんだろうね、急に、………? 」

 

志茂田景樹

「ジキルとハイド以上ですね、………。 

 映画にしたら、大ヒットまちがいなしですよ、………。

 ぬひょほほほ、……ほへ。」

 

中村玉緒

「ぬへほほ、ほへ……。あら、難しい、………。」

 

太田光

「こ、こ、これじゃぁ、お、お、お、おれの性格より、

 お、お、お、おっかねぇじゃねぇか、…………。

 だ、だ、だ、誰か、た、た、た、助けてくれ、………

 ひぃぃぃぃぃ~~~~~~~~~~っ、、、

 が、が、が、が、……がぎぃぃぃ~~~~ぃ~ぃ~ん、ん、ん、

 あ、あ、あ、あ、あ、~~~~~~~~っ、い、いいわぁ~~~~~~っ、、、、」

 

田中裕二

「おまえさ、………。」

 

堀江貴文

「ふん、………だから言ったろう、………。奴は偽善者だって、………。

 今まで、ひた隠しに本性を隠して来たんだよ、………。

 みんなに悟られないようにね、………。

 まぁ僕にとっては、全て想定内の事なんだけどね、………。

 全ては、想定内、………うん、想定内、………あっさりと受け流そう、………。」

 

 

   カツ丼小僧は、鞭の柄の部分で、堀之内九一郎のアゴをしゃくりあげ、

   自分の方を向かせるようにした、………。

   カツ丼小僧は、ドラキュラ伯爵以上の恐ろしい形相で、

   堀之内九一郎の顔を見下ろし、ニタニタと更なる薄ら笑いを浮かべた。

   部屋の外は、いつの間にか嵐となり、稲妻の音が轟いていた、………。

 

カツ丼小僧

「堀之内さん、………

 いいかい、……よく聞くんだ、………。 あんたは、油断したんだよ、………。」

 

堀之内九一郎

「は、………?

 い、いいえ、……? そ、そんな事は、ありません、………。

 ぶるぶるぶるっ、(首を横に振る音)

 め、め、め、滅相もありませんっ、………

 

 な、何をおっしゃりますっ、……カツ丼小僧さまっ、………。

 わ、私は、油断など、しておりません、………。ぶるるるるっ、………

 し、し、仕事に関しては、最後の最後まで、

 手を抜く事も怠ける事もなく、必死に全力でやっていたつもりでございます、………。

 ゆ、ゆ、油断しただなんて、め、め、め、滅相もございませんっ、………。

 ぶるるるるっ、………。」

 

カツ丼小僧

「ふっふっふっ、………甘いな、………。

 私が言っているのは、仕事の事ではないぞ、……九一郎、………。」

 

堀之内九一郎

「い、い、い、一体、わ、わ、わ、私の何がいけなかったのでしょう、………?

 お教えくださいませ、……お代官様、………。

 因果応報ですか、………?

 自分が、金持ちに成り上がり、そのことで周囲が見えなくなって、天狗になり、

 他人に対して、思い上がった傲岸不遜な態度を取ったと言う事でしょうか、?

 

 で、でも、その事なら、昨日、お代官様は、

 あれは、あの時の事で良かったんだと、………

 人生の素晴らしい体験、貴重な経験が出来たんだと、………

 そう、私におっしゃってくれたじゃありませんか、………? 

 

 九一郎、……その言葉を信じて、

 今日から、精一杯、人生をやり直そうとしていた矢先でございますよ、………

 それを、………それを、………

 

 お代官様、………それは、あまりに殺生なお裁きでは、ございませんか、………?

 あまりと言えば、あまりに、血も涙もないお考え、………

 こ、この、九一郎、………それでは、どうしても納得がいきませぬ、………。

 

 き、昨日の、あの優しきお代官様の、私に投げかけてくれたお言葉は、………

 あ、……あの、こころやさしき、微笑みは、………

 

 一体、……一体、……何だったのでしょうか、………?

 

    

    くくくくくっ、………くくくくくっ、………

 

    う、………う、……… う、………

 

    うわぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~っ、っ、っ、   」

 

 

   堀之内九一郎は、その場に突っ伏して、おいおいと、

   大声を上げて、泣き始めた、………。

   

   かつてはテレビにも出演し、ゼロからの出発で粉骨砕身して、

   見事、大金持ちになり上がった男の哀れな姿に、

   一同は、同情を禁じ得なかった、………。

   

   そして、そこまで彼を貶めて、得意の絶頂に浸っているかのように見える

   カツ丼小僧に対して、一同の心に憎しみの心が芽生えつつあった、………。

 

 

   その時、………カツ丼小僧の張りのある一声が、場内に響き渡った。

 

 

カツ丼小僧

「おもてを、あげいっ、………九一郎っ、………。」

 

 

   堀之内九一郎は、ハッと我に返り、

   俯いていた顔を上にあげて、カツ丼小僧の顔をまじまじと見つめた、………。

   

   すると、どうだろう、………。

   カツ丼小僧の顔は、優しげな微笑に変わっていた、………。

   彼の周りには、羽根のついた数体のエンジェルがハーブを持って飛びかい、

   その微笑の後からは、金剛の後光が放たれているかのようにも見えた、………。

 

   神が、……神が、降りてきたのか、………?

   場内の誰もが、そう思った瞬間だった、………。

 

 

川原浩史

「……………。」

 

小林敬

「……………。」

 

一同

「……………。」

 

   

   カツ丼小僧は、ニッコリと微笑みながら、

   これ以上はあり得ないというくらいの、優しさと憂いを帯びた表情で、

   堀之内九一郎の顔を見つめながら、ゆっくりと彼に話しかけた、………。 

 

   手に握っていた一本鞭が、いつの間にか、あやめの扇子に変わっていた。

   一同は、息を飲んだ、………。

 

 

カツ丼小僧

「のう、………九一郎、………。

 聞いてくれ、………私が、本当に言いたかったのは、

 実はそんな事じゃないんだ、………。」

 

堀之内九一郎

「は、………? 」

 

カツ丼小僧

「確かにお前は、自分の大成功に酔いしれ、己というものを見失い、

 はからずも、自分より恵まれない者たちに対して、

 不遜な態度をとってしまったのかも知れない、………。

 

 その様子は、私も、テレビでよく見ていた、………。

 しかしな、………九一郎、………人間、誰だって、自分の調子が上り坂になれば、

 すぐに舞い上がり、我を見失ってしまうのは、不思議な事でもなんでもない、………。

 そうだろう、………? 」

 

堀之内九一郎

「……………………。

 お、……お代官様、………。」

 

 

   堀之内九一郎は、再びカツ丼小僧の顔を、食い入るように見つめ直した。

   涼しげな目元と優しげな微笑みが、堀之内九一郎の心を打った、………。

   エンジェルたちが微笑み、美しい旋律でハーブを奏で始めた、………。

 

 

カツ丼小僧

「のう、………九一郎、………。

 私が、本当に言いたかったことは、人を見下したりした事などではない、………。

 

 確かにそれもあるだろうが、もっと大切な事がある、………。

 

 それはな、………

 お前が、裸一貫から、お金持ちを目指して出発し、

 青雲の志を抱いて、都会にやって来た、その初心の心を忘れてしまった事なんじゃ。

 

 人間というものは、愚かなもので、

 自分が豪勢な暮らしに慣れてくると、ついつい自分の貧しかった時代を忘れて、

 お金の持つ有難さを忘れてしまうものなんだ、………。

 

 お金にありがたみを感じなくなると、お金も、その人間に興味が無くなって、

 お金の方から、その人間を離れていってしまうものなんだよ、………。

 

 よいか、九一郎、………。

 

 絶対に、……絶対に、………初心を忘れては、ならぬぞ、………。

 

 お前が、お金持ちを目指し、一旗揚げようと上京した時の、あのピュアな心、………

 

 その時の心を大切に、……いつまでも、死ぬまで持ち続けるんだ、………。

 

 それが、お金持ちであることを永久に持続できる、鉄則なんだよ、………。

 

 大金を手にしている期間というのは、

 自分が、その大金を握っているのを夢見た、その期間の総量なんだよ、………

 

 よいな、………。決して、油断してはならんぞ、………。

 

 死ぬまで、お金の事を、頭から話してはならん、………。

 

 お前は、まだまだ甘いぞ、九一郎、……….」

 

 

堀之内九一郎

「お、……お代官様、……… 」

 

 

   堀之内九一郎は、その場にひれ伏し、むせび泣き嗚咽した、………

   まるで今までたまっていた苦悩全てを、その場に吐きだすかのように、………。

 

 

カツ丼小僧

「これにて、一件落着、! ! 」

 

 

  カツ丼小僧は、そう叫ぶと、

  一同の見守る中、踵を返して、部屋から出て行った、………。

  暫くして、部屋中に大きな拍手が巻き起こった、………。

 

 

 

細木数子

「あ~~~あ、……どうしちゃったんだろうねぇ、………。

 得意になって帰っていったのは、いいけど、

 長谷川さんの『運命サイクル』の講義、忘れちゃってるよ、………。

 

 いつも、こんな調子なのかい、……この男は、………? 」