金 剛 超 人
カツ丼小僧は、「金剛超人」と金色で大きく書かれたボードを持って、
今井優子と志茂田景樹の前に、得意そうに掲げた
志茂田景樹
「金剛超人、………? 何ですか、 それ、………? 」
今井優子
「強そうな名前ね、……… 」
カツ丼小僧
「おわかりになりませんか、? 天才博士に、超人歌手、……… 」
志茂田景樹
「あ、……わかった、わかった、………
少し考えたら、すぐにわかったぁ~~~~~、」
今井優子
「わかる、わかる~~~~~~~、」
カツ丼小僧
「そうなんですよ、……その通りです、………
超直観力のある、お2人なら、簡単にわかって頂けると思っていました。
これは、僕が将来成りたいと思っている理想像を
たった4文字の中に収めて、端的に表した言葉なんです、………
僕の頭の中には、常に、このような金剛に輝いた、巨大な仏像体の自分がある、………
体は鋼鉄のように頑強で、しなやか、………
ピストルの弾丸に当たっても、びくともせず跳ね返し、
マッハのスピードで空を飛び、堅いコンクリート壁もぶち壊す程の破壊力を
持っているんだ、……… 」
志茂田景樹
「なんか、昭和時代のテレビアニメとか、その実写版の世界ですね、………
凄い、凄い、………ぐわははははは、………。 」
カツ丼小僧
「そうそう、………
テレビが日本に普及して、十年ぐらいしたら、
いろんな超人めいた、正義の味方、怪物、怪人が、画面に登場するようになった、………
戦争時代の余波なんじゃないかと思うけどね、………
「スーパージェッター」、「宇宙少年ソラン」、「ビッグX」、「マグマ大使」、
「エイトマン」、「遊星仮面」、「ウルトラマン」、「仮面ライダー」、
「人造人間キカイダー」、「レインボーマン」、「超人バロム・1」、「デビルマン」、
「黄金バット」、「鉄人28号」、「ジャイアントロボ」、「ミラーマン」、
「スペクトルマン」、「鉄腕アトム」、「宇宙怪人ゴースト」、「バビル二世」、
………なんて、僕の子供時代は、そんな子供番組や、再放送だらけだったんだけど、
そういった超人的、超魔力を持った、正義の主人公が、
マッハのスピードで空を飛んだり、新幹線と競って走り合ったりするシーンが、
常に頭の中に、こびりついていて離れない、………。
この現実の世界では、まったく荒唐無稽で、あり得ない事なんだけど、
僕らの世代にとっては、いくらかは当たり前のような雰囲気も持っているんです。
あの時代が子供時代だった人にとっては、誰だって、……… 」
志茂田景樹
「つまり、……超人は、超人になりたかった、という事なんですね、………
あ、……それ、当然の帰結か、………ふふふ、……… 」
カツ丼小僧
「うん、……ちょっとね、………
いつも「若返りのクスリ」なんて言っているけど、本当はそうじゃない、………
実際の若返り以上のものを望んでいるんだ、………
2人とも、読んだことがあるかどうか、知らないけど、
昔、藤子・F・不二雄さんの、大人向け SF 短編漫画に、
「ウルトラ・スーパー・デラックスマン」というのがありました、………
正義感の強い、一介の投書マニアのサラリーマン、句楽兼人(くらく・けんと)は、
常に、世の不正や悪を憎んでいましたが、
ある日のこと、………突然変異で、超・超・超・超能力が身について、
スイスイと空を飛んだり、建物をぶっ壊したりと、正義の使者となって、
そのとてつもない能力を使って、悪漢どもを懲らしめたりするようになります。
しかし、そのやり方は、独善的で横暴そのもの、………
正義感も行き過ぎたら、とんでもない、という話です、……… 」
志茂田景樹
「知っています、………その漫画は読みました、………
正義と横暴は、紙一重、………そんなものは、正義でもなんでもない、
という話でしたよね、……… 」
カツ丼小僧
「ええ、………それで、実は僕、………
その、ウルトラ・スーパー・デラックスマンに、なりたいんです、……… 」
今井優子・志茂田景樹
「えぇ~~~~~~~~~~~っ、???!!!
ちょ、超人、……な、何を言ってるんですかぁぁ~~~~~~っ、???
そ、そんな、横暴なぁ~~~~~~~っ、………
………ああ、……史上最強の独裁者を目指しているんだから、
当然の帰結か、……… 」
カツ丼小僧
「わははははは、………そうなんです、………
でも、ウルトラ・スーパー・デラックスマンの句楽兼人じゃ、
見てくれがねぇ、………
「オバケのQ太郎」に出てくる、あの小池さんじゃないですか、………? 」
今井優子
「あの、いつもラーメンをすすってる、……… 」
志茂田景樹
「わははははは。」
カツ丼小僧
「能力的には、申し分ないんですが、
見てくれがあれじゃ、ちょっとまずい、………
かといって、ウルトラマンは体が大きすぎるし、仮面ライダーは空を飛ばない、………
鉄腕アトムは、子供のヒーローだし、………
イメージとしては、………
う~~~ん、………やはり、「黄金バット」ですかねぇ、………
あのイメージが、自分に一番ピッタリくる、……… 」
今井優子・志茂田景樹
「お、……黄金バット、………???!!! 」
カツ丼小僧
「うん、……黄金バット、………
ただ、顔がドクロだ、………あれは、ちょっと不気味すぎてまずい、………
顔は、「バビル二世」に出てくる、海の神、ポセイドンかな、……… 」
今井優子・志茂田景樹
「……………??? 」
カツ丼小僧
「まぁ、ちょっと難しいんだけど、大体、あんな感じなんです、………
そういう感じの怪物超人になりたいんですよ、僕は、………
つまり、さっき言ったけど、ここまでやるからには、
もう、ただの若返りなんてレベルのものじゃない、………
細胞そのものを、新しい、優秀な性能を持つ、
ウルトラ・スーパー・デラックス細胞に入れ替えるんだ、………
もう、病気は、一切自分の体に寄せ付けたくない、……… これが本願です。」
今井優子
「で、でも、……それだとすると、………
それって、もう人間じゃないですよね、………超人、………
ひっ、……こ、言葉通りの方向に進んで行く、………
志茂田景樹
「超人の目指す所、考える所は、黄金バット怪人、………
つまり、先程ボードに掲げていた、金剛超人なんですね、………
よく、わかりました、……… 」
カツ丼小僧
「そう、………
だから、まず、その文字を、イメージとして、頭の中の丁度、
中央にイメージする、……… 縦書きで、太いゴシックで、
「金剛超人」の4文字が、金色で力強く書かれ、美しい金剛の光を放っている、………
今、瞑想しています、……… 」
今井優子
「今、ネットや本で調べたんだけど、
「金剛超人」は、………
「金」が8画、「剛」が10画、「超」が12画、「人」が2画で、
全部で4文字、32画です、………
「32」という数の解説を読みますと、………
●財物豊満を暗示する僥倖(ぎょうこう)数です、………
この数は温和で魅力のある性格で、人望があり、目上の人から引立てを受け、
下の人からも尊敬されます、………。
自ら求めなくても、自然と地位が向上していき、
物質的にも非常に恵まれる、幸運吉数です、………。
………他の本では、………
●上位の援助、庇護等ありて、望外の成功幸福を得るか、
意外の巨利を博するも移り気多し、………
なお、この数、大凶数という説あれど、
他運との関係が相剋の時は、凶となる、………
………という事です、………
紫微斗数で観ますと、
「命星」と「外星」の位置に、「才能・度量」の「天府星」がつきます。 」
カツ丼小僧
「うん、……その「32」という数はね、………
姓名数理学の中でも、ちょっと変わった特殊で不思議な数なんだ、………
姓名学のどの本を見ても、32は、まず、81までの数の中では、一番の最大吉数で、
望外の幸福に恵まれるような事が書いてあるんだけど、
自力数ではなく、他や外からの僥倖運ですので、
いきなり大地から泉が湧いて出てくるように、凄い勢いで盛り上がったかと思うと、
その勢いがまた急に、ピタリと止んで、跡形もなくなってしまう事もある、………
僕的には、ちょっと判定が難しい数なんだ、……… 」
32画の名前の人は、
漫画家の故・手塚治虫さん、お笑いタレントの明石家さんまさん、等がいて、
松坂慶子さんのヒット曲、♪「愛の水中花」も、32画です、………。
つい最近まで、寺尾聰さんのヒット曲、♪「ルビーの指輪」も、32画だと思って
いましたが、大間違いで、「指」の「てへん」は3画ではなく、4画でした。
てへんは、「手」の略字であるからです、………
だから、「ルビーの指輪」は、33画となります、………
33は、数理学では、「天下取りの帝王数」と言われています、………。」
志茂田景樹
「大王、………
瞑想中失礼ですが、気分は如何ですか、………? 」
カツ丼小僧は、床に腰を下ろして、背中を壁につけて目をつむり、
一旦、頭をカラにした、………
そして、彼は深い瞑想状態に入っていった、………
カツ丼小僧
「うん、………最高潮の気分だ、………
何か、この文字の羅列は、自分に相性がいいように思える、………
この文字が、長い事、自分の体に定着してくれれば、いいのだが、………
さっき言った、テレビアニメの金剛超人、黄金バットが、
グングンと力強く、空中を飛び回っている映像を、イメージしています、………
BGMは、もちろん黄金バットの主題歌だ、………
ふふふ、………
まるで、子供時代に戻ったかのようだ、………
よく、風呂敷をマント代わりにして、黄金バットの真似をしながら、
家の外の通りを、駆け回っていたっけ、………
あ、………黄金バットの高らかな笑い声が聞こえて来た、…………
わはははははは、……… わはははははははは、……… 」
カツ丼小僧は、そう言って、ニッコリと微笑んだ、………