今井優子
「とに角、多幸感を持った、スケールの大きな言葉を、沢山作り上げて、
それを頭の中で念じ続ければいいんですね、………。
言葉や文字は絶対だという事を信じて、………。」
カツ丼小僧
「うん、………
自分の頭の中を、まず、そういった、絢爛豪華な言葉だけにしてしまうんだ、………
そして、それ以外の貧しい意味を持つ単語は、思い浮かべないようにする、………。
できれば太文字ゴシック体の、迫力のあるダイナミックな字体がいい、……… 」
志茂田景樹
「ちょっと、カツ丼さんさ、………
カツ丼さんが、最近、いつも頭の中で思っている言葉を、
今、声に出して、言ってみてよ、………。」
カツ丼小僧
「うん、………
最近は、どんどん、内容が限りなくエスカレートしてきちゃって、
ちょっと、他人に言うのもはずかしいんだけど、………
「史上最強の幸運児」、「史上最強の独裁者」、「史上最強の超人」、
「地球を呑む」、「宇宙を呑む」、
………などです、………。 」
今井優子
「うわぁ~~~、凄い、………。
なんか、いきつくところまで、行っちゃった、て感じですね、………。」
志茂田景樹
「うん、………
「史上最強の」っていうところが、いいね、………。
だって「史上最強」ってことはさ、………
人間の歴史が始まって以来、
過去にそのような人はいなかったって、ことだからね、………。」
カツ丼小僧
「そうなんです、………
とに角、言葉の選択というものは、慎重にやらなければならないんです、………
言葉は絶対ですから、………
例えば「勝一」っていう名前の人がいて、人は名前通りになるんだけど、
この「勝一」、………
果して、「勝って一番」なのか、
それとも、「勝ちが一つだけ」という意味なのか、はっきりとはしません………。
もちろん、名付け親の気持ちとしては、「勝って一番」という願いを込めて、
その名前を付けたんでしょうけども、名付けの理由というものは、
関係ないんです、………。出来上がった言葉が全てなんです。
ですから、僕は、よく熟考した上で、「史上最強の」という冠をつけたんです。
これでしたら、間違いありません、………
あとは、この言葉が、僕という人間を見切って、僕から離れていかないように
神に願って、本気で念じ続けるだけです、………。 」
志茂田景樹
「「地球を呑む」っていうのも凄いじゃない、………。
よく、こんな言葉、考えつくね、………。」
カツ丼小僧
「ええ、……実はこれは、
故・手塚治虫さんの、長編漫画のタイトルから拝借した言葉なんですけど、
内容はとも角、これ以上スケールの大きい言葉は他にありませんよ、………。」
志茂田景樹
「内容はとも角、……というのは、………? 」
カツ丼小僧
「ええ、………
だって、ただ「地球を呑む」という言葉だけでは、どういう理由で呑み込むのか、
結果として、どう呑み込まれたのか、ということは、ハッキリとはしません、………
地球を戦争の渦に呑み込んだのか、平和で呑み込んだのか、名声で呑み込んだのか、
それとも、宇宙人やお化けが現れて、呑み込んだのか、………
なんのことやら、わからないでしょう、………。
ただ、スケールの大きな言葉、というだけです、………。」
志茂田景樹
「うん、……… そうだね、………。」
カツ丼小僧
「まぁ、それでも、この言葉からは、やはり「多幸感」というのは、
十分に感じられます、………。
でも、このようなスケールの大きな、違った言葉を、何十も、何百も、
頭の中に詰め込んで、連結させることにより、イメージは、ハッキリとしてきます。」
今井優子
「う~~~ん、………
私も、「世界一有名な歌手」という言葉を、頭に刻みつけたんだけど、
やはり、これだけじゃ足りないんでしょうね、……… 」
カツ丼小僧
「そうだね、………
やはり、その言葉の中には、「何で有名になるのか、」
ということは、記されていないからね、………
ひょっとして、犯罪を犯して有名になるのかもしれないし、………。」
今井優子
「や、やめてよぉぉ~~~~~~~~~っ、」
志茂田景樹
「わははははは。」
カツ丼小僧
「優子ちゃんも、僕と同じように、「史上最強の歌手」にしなよ、………
やはり、この言葉だと、ほぼ、間違いがないと思うから、………
あとは、言葉負け、位負けしないように、ただ、際限なく、寝ても覚めても
この言葉を、本気で念じ続けるだけです、………。
優子ちゃんには、「史上最強の歌手」になる、という欲望はありますね、………? 」
今井優子
「もちろん、……あるわ、………。」
カツ丼小僧
「それは、良かった、………
ちょっと、しんどいかもしれないけど、頑張ってください、………。
よく、欲望に振り回されてはいけないと言うけれど、
欲望を持たなければ、人間、この世に生まれてきた意味がありません、………。
人間は、死ぬ直前まで、上を見続けて、
それで、根尽きて死んでいったっていいと思うんです。
「夢なければ死を選ぶべし」です、………。
人間、足る事を知ってはなりません、………。永遠に夢を追い続けるのです、………
もちろん、夢を追いかけ、そのために、自己中になって、
他人に迷惑をかけていいということではありません。
そこのところは、十分注意して、……… 」
志茂田景樹
「そうだね、………
偉大なる発明品は、偉大なる欲望から生まれるんでしょうよ、きっと、………
さて、それでは、発明の話に戻りましょう、………。
ワクワクしてきたなぁ、………
それにしても、ボク、本当に若返る事が出来るのかなぁ、……… 」
カツ丼小僧
「若返りというのは、我々3人の共通の欲望、………
いや、恐らく、世界全人類共通の欲望だから、もし、これに関する発明品を
こしらえる事が出来たら、世界中から熱狂的に歓迎されるだろう、………。
いや、それどころか、争奪戦や、いがみ合いがおこって、
世界中がパニックになるかもしれない、………。
でも、そのためには、コラーゲンだとか、美容整形だとか、化粧品だとか、
肌のうるおいだとか、そんなレベルのものじゃダメだ、………
細胞そのものが、すべて入れ替わってしまうくらいのもの、………
いや、……もっといえば、新種のウルトラ・デラックス・スーパー細胞を
生み出すくらいのものでなければ、……… 」
今井優子
「でも、それを可能にしたら、それって、魔法使いと同じじゃないですかね、………。」
カツ丼小僧
「うん、………
世界最先端の現代高度科学・医学を持ってしても、
それは、絶対に不可能のようにも思われる、………。
だからこそ、魔術や呪文、方程式のような、原始的なやり方しか、
方法がなくなってくると思うんだ、………。そして、想念の力、……… 」
志茂田景樹
「ふふふ、………
「史上最強の超人」である、カツ丼小僧さんなら、それは出来ますよ、………
十分、期待が持てます、………。」
カツ丼小僧
「お褒めに預かって光栄です、………。
「超ウルトラ天才博士」であり、「史上最強の天才博士」の志茂田景樹さん、………
必ずや、我々の偉大な発明品を完成させましょう、……… 」
志茂田景樹
「わははははは、………。
これから、否定的な言葉を口にするのは、一切、やめにしよう、………
お互いをほめたたえるような言葉で、会話を埋め尽くそう、………。
体中から、歓喜のアドレナリンが、いっぱい湧き出てくるような、……… 」
今井優子
「それなら、私も、
これから「史上最強の頭脳派女子」となって、発明づくりに協力します、………。
なんといっても、「若返りの発明」作業ですからね、………
やり甲斐があるわ、……… 」
カツ丼小僧
「うん、………そうだ、………
我々は、超人なんだ、………もう、他の人間とは違う、………
その3人が寄り集まっているんだ、………必ず奇跡は起こるだろう、………
いや、奇跡なんかじゃない、………
我々はもう、自分たちの輝かしい未来を、ワードで乗っ取ってしまったんだ、……… 」
3人は円陣を組んで、大声で快哉を叫んだ、………