カツ丼小僧と有名人のドスケベ座談会 401

 

   カツ丼小僧と今井優子、志茂田景樹の3人は、

   いつもの座談会の部屋と同じ階にあり、

   そこから少し離れた秘密の隠れ部屋に集っていた。

 

   3人は、やや神妙な顔をしていた、………

   一体、ここで何を、おっ始めようというのだろうか、………?

 

 

カツ丼小僧

「優子ちゃんに、景樹さん、………今日は、どうもありがとう、………。

 お2人には、是非とも、僕の研究に協力してもらいたくて、

 今日、わざわざ、ここにお呼びしたんですけど、……… 」

 

今井優子

「なにか、偉大な発明品を作って、

 世界をアッと言わせたいとか言ってましたけど、………。」

 

カツ丼小僧

「うん、……… 」

 

志茂田景樹

「あ、……でも、ちょっと、その前に、………

 また、冷えた缶チューハイを飲みたくなってきたな、………

 冷蔵庫、いいかな、………? 」

 

カツ丼小僧

「ええ、……どうぞ、どうぞ、……… 志茂田博士、………

 好きなだけ取って、お飲みになってください、………

 今日は、おつまみに、チーズかまぼこも用意しておきました、……… 」

 

志茂田景樹

「志茂田博士か、……… うん、いいね、………

 僕は、職業柄、先生とは呼ばれるけど、博士と呼ばれるのは初めてだ、………。

 先生とは違った風雅な趣があるね、………。うん、いいね、………。」

 

 

   志茂田景樹は、そう言って、部屋の片隅にある小型の冷蔵庫から、

   白ぶどうチューハイとチーズかまぼこを取り出し、まずは、

   白ぶどうチューハイの方を、ゴクゴクと飲み干した、………

 

 

志茂田景樹

「ふひぃぃ~~~~~~~~~~っ、………

 うん、いいね、……これで、一息つくと、頭が冴えわたって、

 気分も落ち着くんだ、………でも飲み過ぎはいけないよ、………

 飲み過ぎは却って逆効果だ、………

 ここのところの見極めを、ハッキリしなくちゃいけない、………

 それが人生の分疑点というものだ、……… うん、……… 」

 

 

   志茂田景樹は、そう言って、今度は、おつまみのチーズかまぼこを、

   さも美味しそうに、クチャクチャと舌を鳴らして食べ始めた。

 

 

志茂田景樹

「うん、……これはうまい、………チーズがこってりしていて、

 かまぼこと僕の舌との絡みが、いい三角の三つ巴関係を織り成している、………

 舌を丸めて、包み込むようにして、少しづつチーズを溶かしながら食べるんだ、………

 

 こんなものだって、ちょっとした創意工夫によって、美味くなったり、

 そうでなくなったりするんだ、………

 この事実を、市川海老蔵さんが知ったら、何というだろう、………? 

 

 それなら俺にやらせてみろっ、てか、………? ふひはひはひは、………。」

   

今井優子

「あのう、……… 発明品の話、……… 」

 

カツ丼小僧

「うん、……実はね、………

 僕の父親は、かつては弁理士という職業についていてね、………

 特許申請の仕事をしていたんだ、………今はもう齢でやめちゃったんだけど、………

 

 だから、これも何かの運命のように思われるんだ、………

 きっと、神のお導きやご加護があるに違いない、………

 神のバックアップを信じて、大きな発明品作りに挑戦してみよう。」

 

志茂田景樹

「ぐびっ、ぐびっ、ぐびっ、………

 はぁぁ~~~~~~~~~っ、 うめぇぇ~~~~~~~~~~っ、

 白ぶどうチューハイ、………これ以上の発明品がどこにあるっ、?………

 くやしかったら、かかってこいってんだ、……… 

 バ、バ、バ、カ、………ヤローーーッ、……… うい~~~~~くっ、」

 

カツ丼小僧

「あ、あ、あ、………は、博士、………

 ダメですよ、………飲み過ぎはいけません、………

 今言ったばかりだというのに、……… もうお酒はだめです、………

 暫くの間、冷たい水でも飲んでいてください、………

 こんなんじゃ、話になりませんよ、………。」

 

 

   カツ丼小僧は、志茂田景樹から、缶チューハイを取り上げ、

   代わりに、ナチュラルウォーターの入ったペットボトルを手渡した。

   志茂田景樹は申し訳なさそうに、缶チューハイの容器を捨てて、

   今度は、ペットボトルの水を、ゴクゴクと飲み干した、………

 

 

カツ丼小僧

「博士も、さっきチーズかまぼこの食べ方の事なんかを言っていたけど、

 ………そうなんだ、………

 ちょっとした創意工夫によって、全てが変ってしまう事だってある、………。

 

 例えば、ヤクルトね、………

 あれね、………どうしてあんなに甘くておいしく感じるかというとね、

 やはり、あの小さなプラスチック製の容器に入っているからですよ、………

 

 ためしに実験で、何本かのヤクルトを、一個のガラスのコップに移しかえて

 まとめて、ゴクゴクと飲んでみた事があるんだけど、味が変わってしまっていて、

 あまり美味しくない、………のっぺらとしていて、甘さを感じなくなるんだ。

 

 つまり、小さな容器だと、舌の先に、チビチビと感じながら少しづつ

 飲んでいくから、美味しく感じるんだと思う、………。

 舌先の部分というのは、特に甘さを感じる部分だからね、……… 」

 

今井優子

「でも、電子科学や薬品の知識もない私たちが、一体どうやって、

 発明品なんかを生み出せるというのかしらね、………?

 それとも、何か別の違った方法で、作るということですか、………?

 あの、占いの法則で、………? 」

 

カツ丼小僧

「うん、………

 数や、字形や、音の法則というのは、確かにあるんだ、………

 この世のあらゆるものは、数や、字形や、音によって構成されている、………。

 それだけは、僕の今までの研究によって明らかなんだ、………

 

 名前を変えて、「その名前は自分なんだ」と念じ続けると、

 本当にそうなっていく、………

 自分がこうなろうと、意識しなくとも、自然とそうなっていく、………

 少なくとも自分から、その名前が離れていってしまう間はね、………

 

 目に見えやすくハッキリとしている事でいえば、

 「筆跡」というものがあるでしょう、………

 名前を変えると、筆跡はガラリと変わってしまう事がある、………

 僕も、何度も経験しているけど、まったく違う筆跡になる、………

 

 それから絵の「画風」、………

 それも名前を変えて、その名前を念じ続けると、まったく変わってしまう、………

 

 例えば、故人なんですが、漫画家の石ノ森章太郎さん、………

 旧ペンネームは、「石森章太郎」なんだけど、1984年に、

 自分の身の周りに、あまりによくない事が続くので、

 名前を、石森章太郎から石ノ森章太郎に変えたのですが、

 

 その頃から、漫画の絵柄も少しづつ変わって来ていて、

 以前の切れ味鋭いタッチから、フンニャリしたような、

 柔らかなタッチに変わっていったんですよ、………。

 

 まぁ、2つの絵柄を見比べてみて、一応は、同じ人が書いたんだな、

 ということは、なんとかわかりますけど、やはり大きく違っている、………。

 

 それから、江戸時代後期の天才浮世絵師、葛飾北斎も、一生の内で、

 数十回も名前を変えていますが、この法則を知っていたのでしょうか、………? 」

 

志茂田景樹

「うん、………

 あんた、いつも、文字や音には霊が宿っていて、生命を持っているんだと

 言ってるけど、つまり、あんたの発明づくりの骨幹というのは、そこんとこなんだな。」

 

カツ丼小僧

「ええ、……そうです、………

 そして、それは、何も名前だけではないんです、………。

 名称や職業名、渾名などにも言えます。

 

 志茂田さん、………僕は先程、あなたの事を、「博士」とお呼びしましたけど、

「博士」という文字には、実際の博士に似つかわしい成分が、その名前の中に

 潜んでいるからこそ、「博士」なんです、………。

 博士という称号は、「博士」という文字の内容そのものなんです、………。

 

 ですから、志茂田さん、………

 これからは、自分の事を「超天才博士」と思い込んでください、………

 思い込む、というのは、もちろん、自分が超天才博士になって、偉大な発明品を作り、

 大衆から騒がれている事をイメージすることも、大切なんですが、

 その前に、文字というのは、それをそのまま表現している絶対のものなんだ、

 と思い込んで、自分イコール、「超天才博士」と頭の中で念じ続けてください。 」

 

志茂田景樹

「文字を念じるって、どういう事、………?

 つまり、その「超天才博士」という名称を、文字の面からも、音の面からも、

 頭の中に、刻み付けるという事かな、………? 」

 

カツ丼小僧

「ええ、そうです、………

 しかも、それを執拗にやってください、………

 とにかく、しつこく、粘り強くやっていく事が重要なんです、………。

 

 自分の頭の中に「超天才博士」という文字のテロップを思い浮かべ、

 俺は、この文字の通りの人間なんだと、……この文字通りになるんだと、………

 寝ても覚めても、そればかり考え続けるんです。」

 

志茂田景樹

「でも、もしかすると、君のいつも言っている通り、その名称の中に、

 悪い凶星や、凶数が潜んでいるかもしれないよ、………それでもいいの、………? 」

 

カツ丼小僧

「ええ、……構いません、………

 こういう場合は、何よりも言葉の意味が重要なんです、………

 それに、これもいつも言っている事なんですが、

 凶数だから、なにもかも全てが悪いだとか、吉数だから、安泰だとか、

 そんな事は、まったくありませんよ、………

 

 それは、ケースバイケースだったり、就いた職業や、他人との相性などでも、

 変化してくる訳ですから、あまりこだわることもありません、………

 文字の意味を最優先してください、………。」

 

今井優子

「そう言えば、「博士」という文字の「士」は、「さむらい」だから、

 カツ丼小僧さんの言っている、紫微斗数占いの「天機星(てんきせい)」が

 ついているわ、………。志茂田さんの、「志」にもついてる、………。」

 

カツ丼小僧

「そうなんです、………

 天機星は、「研究・学問」などを司る、実に頭のいい星です、………。

 あと「博識」や「博学」の「博」、ですが、………

 左側の「十(じゅう)」は、「芸術・不満」を表す「傷官星(しょうかんせい)」、

 右側の「一(いつ)」の部分は、「内気・平凡」の「収星(しゅうせい)」、………

 

 「田(たへん)」は、「風流・偏屈」の「偏印星(へんいんせい)」、

 「、(てん)」は、「芸術・不満」の「傷官星」、

 最後の「寸(すん)」は、「助力・引立」を得やすい「右弼星(うひつせい)」、です。

 

 こういったもろもろの星が交差し合い、一つの言葉を、構成しているのですが、

 「博士」というイメージを想像してごらんなさい、………

 漫画や小説、ドラマなどにも出てくる、「博士」のイメージ、………

 何か、今言った、言葉通りになっていませんか、?

 ただ、画数的には、15画、文字数は、2ですので、

 いくらかは、温厚でおとなしいイメージも加わります。 」

 

今井優子

「では、「音」の方は、どうなるんです、………?

 それも、あるんですよね、………。 」

 

カツ丼小僧

「うん、………

 もちろん、音の方もあって、それも、とっても重要なんだけど、

 今は、字形や文字の観点からのみにしたいんだ、………

 頭の中が、こんがらがって、わかりづらくなるからね、………

 もうしばらくして、少し落ち着いて来たら、「音」の方の講義もするつもりです。」

 

志茂田景樹

「つまり、僕は、ただひたすら、「超天才博士」という単語を、

 字形の面からも、音の面からも、繰り返し思い浮かべればいいってことなのね、? 」

 

カツ丼小僧

「ええ、……そうです、………

 その単語イコール、自分そのものなんだと、自分に言い聞かせるようにして、

 ただ、ひたすら、思い浮かべてください、………

 そして、その言葉を自分の名称だとも、思い込んでください。

 自分は、まさに、そういう人間なんだと、自分で定義づけるのです、………。 」

 

志茂田景樹

「つまり、………平たく言えば、………

 形から入る、………言葉から入るって言う事ですね、………。」

 

カツ丼小僧

「うん、……そう、………

 自分の名前通りに、自分が形成されて行くのは、実は、自分が、その名前を

 普段から、「その名前イコール自分」と思い込んでいるからなんだ、………

 思い込むと、その通りにそうなってしまう、………

 

 それと同じ道理で、「名称」だとか「職業名」にも、その法則が適応する筈だから、

 それを念じ続ければ、段々とそのように、……… 」

 

今井優子

「でも、そんなにうまい具合に、いくんでしょうかね、………? 」

 

カツ丼小僧

「うん、……それもまた、名前同様、………

 もし、その名称が、本人に適応していないのなら、

 名称の方から、その人間を離れていきます、………短期間の内に、………。」

 

志茂田景樹

「ようし、………

 こうなったら、何が何でも俺、「超天才博士」になってやるっ、………

 必ず、この栄誉ある称号を手に入れ、自分のものとしてやるぞっ、……… 」

 

カツ丼小僧

「おめでとうございます、………志茂田博士、……… 」

 

今井優子

「志茂田景樹、超天才博士、………。」