カツ丼小僧
「それでは、お待ちかね、………「週刊現代」(3月28日号)、
大橋巨泉さんの「今週の遺言」です、………
見出しには、
「孤独死は、したくないと思う、………
ソシアル・ネットワーク時代の落とし穴ではないか? 」
………と、ありますね、……… それでは、巨泉さん、お願いします、……… 」
大橋巨泉
「うん、………
俺さ、……近頃、毎日のように、死について考えるようになったんだ、……… 」
カツ丼小僧
「え~~~~っ、! ? そうなんですか、? 今頃、………?
僕なんか、若い時から、5分置きごとに考えてますよ、……… 」
一同
「わははははは、……… 」
大橋巨泉
「どなたの言葉か、思い出せないが、ある作家が、かつて、
「中年を過ぎて、一日一回、死について考えないのは、おかしい、………
しかし、一回以上考えるのは、もっと、おかしい、」
………と、あった、……… 」
カツ丼小僧
「ええ~~~~~~~~~っ、! ! ? ? 」
一同
「わははははは、……… 」
大橋巨泉
「たしか、こんな文章だったが、
現在の俺は、2回以上考えていると思う、……… 」
中村玉緒
「私は、自分の事より、死んだ、勝新さんの事ばかり、……… 」
一同
「ほぉ~~~~~~~~っ、……… 」
大橋巨泉
「まず、一昨年の「二度目の癌」で、副作用や、後遺症に苦しんだことがある、………
昨年は、三度目の癌が発見されたこともある、………
暮になって、千加(次女)の夫が、大動脈解離で急死したことも影響していよう、………
それに追い討ちをかけるような訃報に接した、………
亡くなったのは、現役時代、20年以上にわたって、
俺のマネージャーをつとめてくれた、近藤利廣君である、……… 」
近藤真彦
「うわっ、……俺と同じ名字っ、……嬉しいなっ、……… 」
田原俊彦
「あははははっ、………ボクと同じ、トシちゃんでぇ~~~すっ、」
ビートたけし
「けっ、……ガキの会話だ、……… 洒落にもならないよ、……… 」
マツコ・デラックス
「あんた、人の事なんて、言えんのかしらね、………
あんただって、昔、いい年して、
タケちゃんマンなんて、やってたじゃないのさっ、………
私、なんだって、知ってんのよ、……… 」
明石家さんま
「クワーーーーーーーッ、カッカッカッカッ、……… ヒーーーーッ、ヒーーーーッ、
ア、アンタ、よ、余計な事、言いはりまんな、……… 」
大橋巨泉
「近藤利廣君は、1938年生まれだったから、76歳の筈であった、………
彼が俺のマネージャーになった時、俺はまだ、タレントになっていなかった、
ジャズ評論家、兼、放送作家であったから、もう半世紀も前の話である、
1964年当時、……… 」
カツ丼小僧
「あ、……1964年、……それって、僕の生まれた年だ、……… 」
近藤真彦
「俺も、……… 」
高島礼子
「私もよ、……… 」
三原じゅん子
「私も、……… 」
高知東生
「おい、お前ら、つまらねえこと、言ってんなよ、………ガキじゃあるまいし、……… 」
野村義男
「………お、俺、………も、……… 」
大橋巨泉
「1964年当時、………
俺は、エマノン・プロという事務所に所属し、近藤は、そこの社員だった、
エマノンは、いわゆる、芸能プロではなく、経理事務所だった、………
所属していたのは、作家、評論家、作曲家など、スタッフ側の人間で、
芸能人は居なかった、
社長は、広瀬礼二さんといって、経理の専門家だった、………
主として我々の財務をやってくれて、10%の手数料を取るだけの、
良心的な事務所であった、
ところが、'65年の11月に「11PM」が始まり、
ひょんな事から、俺は、タレントになってしまった、………
そこで、広瀬さんは、近藤を、オレ専属のマネージャーにしたのである、」
中村玉緒
「オレオレ、マネ、……… 」
高知東生
「今日は、くだらんなぁ、……… 」
近藤真彦
「いつもでしょ、……… 」
田原俊彦
「あははははっ、……… 」
野村義男
「ふふっ、……… 」
武田鉄矢
「の、……野村が、…… 野村が、笑った、……… 野村が、……… 」
マツコ・デラックス
「だから、アンタ、大袈裟だって言ってんじゃない、………
や~~ねぇ、……… いい加減にしてちょうだいよ、
よっちゃんが、可哀想でしょ、……… 」
野村義男
「ふっ、……… 」
武田鉄矢
「あっ、…… また、少し笑った、…… 少し、……… 」
野村義男
「……………。」
武田鉄矢
「あ、……… 」
大橋巨泉
「翌'66年の4月から、俺は、正式に司会者となり、とんとん拍子に、
タレントとして、売り出した、………
近藤も、初めての世界だったが、持ち前の明るさと、人見知りしない性格で、
どんどん職場を広げて行った、
やがて一年間の”お礼奉公”(古風だが、離婚時、保証人になってくれた、
広瀬社長への謝意であった、)のあと、独立して、大橋巨泉事務所を設立し、
近藤は、社長になった、……… 」
カツ丼小僧
「大橋巨泉事務所かぁ、……… いいなぁ、………
僕も、一度、芸能プロダクションに、所属してみたいんですが、……… 」
大橋巨泉
「うん、………いいよ、………
よかったら、今度、一度、俺の事務所に遊びに来いよ、………
まぁ、今は、「大橋巨泉事務所」じゃなくて、
「オーケープロダクション」っていうんだけどね、……… 」
小倉智昭
「え~~~~っ、!!!??? きょ、巨泉さん、…… それって、本当ですか、?
こ、こんな奴が、事務所に入ったら、事務所、潰れちまいますよ、……… 」
大橋巨泉
「わははははは、……… 小倉、………
お前を入社させる時だって、オレ、本当は、相当覚悟がいったんだぞ、……… 」
中村玉緒
「ぬほほほほ、……… オレオレ、覚悟、……… 」
所ジョージ
「玉緒さん、…… それって、何なのよ、………
洒落にも、ナ~~ンにも、なってないじゃない、………つっまらない、……… 」
中村玉緒
「そうやって、すぐ、他人にダメ出しするのが、あなたの悪い、ト・コ・ロ、……… 」
所ジョージ
「やった、………♡ 」
大橋巨泉
「俺は、今でもそうだが、経営者としては、「君臨すれども、統治せず」、
というスタンスで、通している、………
オーナーである俺が、いつも会社にいては、社長や総支配人は、やりにくい筈だ、
年に一度の、幹部ミーティングで、大まかな指示や注意をするだけで、
俺自身は、月に一回も、事務所に顔を出さない、
近藤も、やり易かったと思う、………
仕事は順調だったが、俺は「自分の番組しか出ない、」というスタンスを
守っていたので、他のタレントも入れるようになった、………
しかし、この一種の「放任主義」は、失敗であった事になる、
近藤は、マネージャーとして、タレントに仕事を取ってくる事には長けていた、………
しかし、それでいくらの利益が出るのか、という計算が出来ない、………
いわゆる、ドンブリ勘定であった、
テレビ1本、100万円のギャラのタレントも、5万円のタレントの仕事も、
同じようなプロセスで、取っていたらしい、……… 」
松坂慶子
「そうですわねぇ、………
タレントといっても、ピンからキリまで、色々、ありますものねぇ、……… 」
野村義男
「………お、……おい、……も、もう、いい加減に、しろよ、………
も、……もう、こ、こんな座談会、………出て、……やらない、から、な、………
どうせ、俺は、まったく人気の出なかった、アイドルだよ、……
でも、それで、俺の人間性や、全てを否定する事もないだろう、……… 」
一同
「あ、……… 」
松坂慶子
「え、……? あ、…… す、すいません、……… 野村さん、………
わ、私、別に、そんなつもりで言った訳じゃありませんのよ、……… 」
武田鉄矢
「そ、そうだぞ、野村、……… おまえだけじゃないんだ、………
人間、みんな、不憫してるんだぞ、………みんな、どこも、……大変なんだ、………
いいな、……… 不憫は、お前だけじゃ、ない、………
なんだ、「たのきんトリオ」の時、一人だけ人気が出なかったからといって、
そんな事がなんだ、……… ん、……? 辛抱なさい、……… 辛抱、………
もう、30年も前の事じゃないか、………
いいかい、野村、………
「辛」い という字に、横棒をひとつ加えるだけで、人は「幸」せ、となるんだ、
つまり、人の幸福というものはだ、………
案外、ちょっとした工夫や智恵で、簡単に手に入るものなんだよ、………
せ、先生は、おまえを、そんな子に育てた覚えはないぞ、………
こんな風に、先生は、お前の事を叱るけど、
本当は、お前が可愛いからなんだ、………
お前を、愛しているからなんだ、………
私はね、………出来の悪い生徒ほど、可愛いんだ、………
もちろん、松坂さんだって、悪気があって、言ったんじゃないんだ、………
さ、……野村、…… 松坂さんに、お謝りなさい、………
さ、……… 謝るんだ、……… 」
野村義男
「……………。 う、う、……うるせぇっ、……… うるせえっ、………
ど、どいつも、こいつも、……お、俺をっ、………
俺を、バカにしやがってっ、……… 」
その時、悲劇が起こった、………
よっちゃんこと、野村義男は、そう叫ぶや否や、いきなり、手に持っていた、
ビール瓶を片手に、浴衣姿のまま立ち上がり、顔を真っ赤に紅潮させて、
恩師の金八先生こと、武田鉄矢に襲い掛かった、………
一同
「あっ、……… 」
座談会に出席していた人々は、この余りの不意の出来事に、
目がくらみそうになったが、もう、間に合わなかった、………
積もりに積もった怒りを、ついに爆発させた野村義男は、
振り上げたビール瓶で、恩師・武田鉄矢の眉間を叩き割った、………
何度も、……何度も、……
辺り一面に、ガラスの破片と鮮血が飛び散り、眉間を叩き割られた、武田鉄矢は、
顔中を血まみれにして、体ごと勢いよく、その場の座敷上に崩れ落ちた、………
しかも、顔面を畳の上に、モロに打ちつけたらしい、………
「ヒィーーーーーーーッ、」
「キャァーーーーーーーーーッ、」
「お、おいっ、………、きゅ、……救急車だっ、救急車を呼べっ、……… 」
「タンカだっ、……… タンカをもって来いっ、……… 」