カツ丼小僧
「それでは、巨泉さん、昨日の続きから、お願いします、……… 」
大橋巨泉
「うん、………
認知症の彼女には、56歳になる娘と、55歳の息子がいて、
最後の週末に、二人を島に呼んだ、………という所からだったね、……… 」
カツ丼小僧
「はい、……… 」
中村玉緒
「ぬほほほほほ、……… 」
大橋巨泉
「家族4人で食事をし、いつものように夫と議論したあと、
息子を隣に読んで、「あれは、パパが正しいけど、今は言わないでね、」
それから、娘と息子を別々に呼んで、二人きりの時間をもった、
最後の言葉は、こうだったという、………
「貴方にとって一番大切な事は、貴方自身でいる事よ、……… 」
さて、この事件のインパクトは大きい、………
西部どころか、全カナダに広まり、オタワ(首都)の議会でも、
何人かの議員が、議員立法をする動きを示している、
2012年の世論調査では、なんと80%のカナダ国民が、
助かる望みのない患者の自殺を、医師がほう助する事に賛成している、………
2013年の別の調査でも、70%が賛成だ、
しかし、これが法改正となると、世論のように簡単にはいかない、………
特に、認知症の場合は、難しいという、……… 」
中村玉緒
「ふんふん、それで、………? ごほごほごほ、……… 」
松田賢二
「こらっ、……… 」
中村玉緒
「すいません、つい咳ゴミまして、……… 許してくんろ、……… 」
松田賢二
「なんか、ワザとやっているように思えるなぁ、……… 」
大橋巨泉
「要するに、患者自身に意志決定能力がない場合は、
うっかりすると、犯罪がからみかねない、………
認知症は老人の病気だから、遺産とか相続がからんでくる、………
それだけに、完全に痴呆になる前に決行した、
ジリアンさんの、知性と勇気と行動力が羨望される訳だろう、………
カナダをはるかに凌ぐ老人国ニッポンでは、
この問題は、どうなっているのだろう、………
このような事件は起こらないし、それ程の議論も湧いていまい、………
それは、日本が、もともと自殺に寛容な国だからだろう、……… 」
カツ丼小僧
「僕は、自殺したくても、その勇気がありません、………
自殺するという事は、つまり、自分が、この世から消滅するという事です、
自分という存在が、この世から消えてしまうとは、
一体、どういう事なんでしょうか? ちょっと実感がわきません、
それに、自殺するには、必ず痛みを伴います、
まぁ、今回のジリアンさんの場合は、例外で、
そうではなかったみたいですが、………
それに、もし、自殺に失敗でもして、更に酷い状態になっても、
生きなきゃならないだとか、
死んだら、死んだで、果して、死後の世界で、今よりいい状態になれるのか、など、
色々な考えが、頭をよぎります、……… 」
浅香唯
「でも、カツ丼さんは、生まれ変わりというものを、信じているんでしょう? 」
カツ丼小僧
「僕にとって、生まれ変わりは、当たり前で、もう無限回数、
生まれ変わっていると、確信しています、………
いや、それどころか、ずっと先の、生まれ変わった人生の、
立体映画のフィルムの内容まで、全て決まっているとさえ、思っています、
つまり、人間の人生という物は、普段、我々が寝たり起きたりするような、
単なる、一通過点だと思っているのです、
頭の中では、ここまで、理解はしているんですが、
自殺は、やはり、恐くて出来ません、………
それに、もし、あらかじめ決定づけられている、その人間の運命に、
自殺するシーンが無ければ、自殺は出来ないのです、………
それも、運命で、決定づけられている訳ですから、………
今回のジリアンさんの話にしても、ジリアンさんが、84歳で、
その「草の上」で、自殺して、国中で騒がれる事は、
もう、生まれる前から決まっていた、というのが、僕の考えです、………
ただ長生きすれば、それでいいのか、と言えば、そうではありません、
巨泉さんがいつも言っている、「生活の質」というのが問題です、」
大橋巨泉
「じゃぁ、そろそろ、始めるよ、………
あるカナダ人の友人は、
「日本人はハラキリを名誉と考えて来たから、
キリスト教徒ほど自殺を罪悪視しないんだろう、………
おそらく日本で調査したら、賛成は100%近いのではないか、」と言うが、
俺は、意外と少ないんじゃないかと、思ってるんだ、………
ハラキリの他に、姥捨て山の話だってあるし、
日本では、老人の命を、それ程大切に考えていないような気がする、
カナダでは、死に直面した患者を、医者がアシストするという
問題に、賛成が多いだけだ、………
日本はむしろ、「老人は勝手に死ね、」という考えの方が強いと思う、 」
中村玉緒
「おほおほおほ、………そうでっか、………それは、それは、……… 」
大橋巨泉
「おほおほおほ、………
俺、いつも書いてる事なんだけど、
「熊谷守一画伯のように、一日でも長く生きたい、」と考えて来たが、
その一方で妻には、
「植物状態では、生きたくない、延命治療は断ってくれ、」と言ってある、
特に今回、二度の癌を患って、一時は、「死んだ方がマシ、」
とまで、思った事がある、………
大切なのは、「生きている事、」ではなく、「生活の質、」なのだと、
つくづく思った、………
その質が失われそうな手術を止め、放射線治療を選んだユエンである、………
その点から考えても、ジリアンさんの選択を理解し、尊敬したい、………
以上、終わりです、……… 」
カツ丼小僧
「ありがとうございました、………
考えさせられる事の多い、含蓄のある、お話でした、………
それでは、今回は、これで、座談会は終了します、
皆さん、最後の一言をお願いします、……… 」
高田純次
「テキトーに生きて、テキトーに死ぬ、」
タモリ
「ユンケル哲学、ユンケルンバッ、ユンケル黄帝液っ、」
イチロー
「あっ、それはっ、……… 」
野村沙知代
「あんたたち、さっきから、巨泉さんの話、ちゃんと聞いてたの? 」
野村克也
「サッチー、こいつらに、何言ったってダメや、………
思考能力のカケラもないんや、……… 」
渡辺麻友
「みじかびの、きゃぷりきとれば、すぎちょびれ、
すぎかきすらの、はっぱふみふみ、………
やったぁ~~~、 まゆゆ、やっと、言えるようになりました~~~~、」
大橋寿々子
「おめでとうございます、………
まゆゆさんには、「大橋巨泉賞」として、パイロット万年筆が進呈されます、」
田中裕二
「まゆゆ、良かったね、……… 」
太田光
「きゃ、きゃ、きゃ、きゃぷりき、とれば、………す、す、す、……… 」