鎌かける
「皆さん、お楽しみの談笑中、誠に申し訳ありませんが、
ここで、ちょっと、お話があります、 実は、今日、5月25日は、
「とくダネ!」キャスター、小倉智昭さんの誕生日であります、
皆さん、小倉さんに心よりの祝福をお送りください、……… 」
ここで、小倉智昭が、照れくさそうに頭を掻きながら立ち上がって、
皆に深々と頭を下げると、場内から、拍手の嵐が湧き起こった、
暫くして拍手が鳴りやみ、場内が静まり返ると、
小倉智昭は、鎌かけるからマイクを受けとり、
いつものテレビでの口調とまったく同じように、流暢に話し始めた、
小倉智昭
「え~~、皆さん、本日は、私のような者の誕生パーティーにお集まり頂き、………
あ、違う、違う、そうじゃなかったっけ? それは、すみませんです、はい、
わはははは、 まぁ、とりあえず、私は、今日で、めでたく67歳になりまして、
つまり、むな(67)しい、……むな爺、そう、虚しい爺さん、と言う訳で
ございまして、………
いえいえ、巨泉さんへの当てつけで言っている訳ではございません、……… 」
大橋巨泉
「小倉の女房さぁ、若くて、本人より歳が15歳も下なんだぜ、………
わはははは、羨ましいよなぁ、俺ね、14歳下までなら許せるの、
でも、15歳以上年下っていうのは、ちょっとねぇ、……… 」
小倉智昭
「皆さん、巨泉さんの奥さんの大橋寿々子さん、巨泉さんより、歳が14下なんですよ、
だから、そういう事を言ってるんです、
ご来場の皆さん、そう言った訳でございまして、
巨泉さんの言った事を、あまり真に受けてはなりません、」
場内のあちこちから笑い声や拍手が飛び交い、
会場はアットホームな暖かな雰囲気に包まれた、
そこで、いきなり襖が開き、また4人の男女が、花束を持って現れた、
朝の報道番組、「とくダネ!」でお馴染みの、
菊川怜、梅津弥英子キャスターと、笠井信輔、
そして、前キャスターの、佐々木恭子である、………
笠井信輔
「小倉さん、今日は本当におめでとう、コングラッチュレーション、
これからも、今まで以上に、
我が報道番組、「とくダネ!」を、元気に牽引して行ってください、
宜しくお願いします、」
菊川怜・梅津弥英子
「小倉さん、お誕生日、おめでとうございまぁ~~す、
これからも、宜しく~~、」
小倉智昭
「うんうん、ありがと、それから怜ちゃん、放送中、噛まないようにね、
キャスターは、歯が命、………あ、舌か? ま、まぁ、いいや、……… 」
笠井信輔
「でも、小倉さん、恭子ちゃん、暫く見ない内に、
ホント、色っぽくなりましたね、そう思いませんか、………?」
佐々木恭子
「いえいえ、そんな、……… 」
小倉智昭
「うん、結婚してから特にね、……… 」
カツ丼小僧
「佐々木恭子さん、………俺、「とくダネ!」時代、あなたの大ファンだったんです、
すいませんが、握手してください、」
今井優子
「一体、どれだけ多くの女性のファンなんだか、……… 」
佐々木恭子
「ええ、いいですよ、……でも、私、ちょっと、………
あなたの普段の言動は、到底、理解できません、
女性を、オモチャや人形のように扱ったり、女性蔑視はやめてください、」
カツ丼小僧
「ええ、多分、俺、恭子さんには、嫌がられているかもしれないと思っていました、
恭子さんは、まじめで純粋そうな人柄ですからね、………
佐々木恭子さんは、松坂慶子さんと同じで、
いつも白い服や淡い色の服を着ている時が、多いんですけど、
そういう人は、大体、心も、清純な人が多いんですよ、
中々、僕のやる事、言う事には、ついてこれないでしょうね、……… 」
松坂慶子
「カ、カツ丼さん、私は、……… 」
カツ丼小僧
「松坂さんは、嫌でも、僕と一緒に付いて来て貰います、………
もう、ここに来て、いまさら引き返す事は出来ません、……… 」
松坂慶子
「…………………、」
高内春彦
「だ、大丈夫だよ、慶子、……… カツ丼さんの言う事を信じよう、……… 」
松坂慶子
「ええ、………そうするわ、私、……… 」
カツ丼小僧
「恭子さん、……… 」
カツ丼小僧は、清純な佐々木恭子に、右手を差し出して握手を求めた、
すると、佐々木恭子も、右手を差し出し、2人は大勢の来客の見ている前で、
ガッチリと、握手を交わした、
佐々木恭子の暖かな手の平のぬくもりが、カツ丼小僧の手に伝わり、
カツ丼小僧は、天にも昇るような気持ちになって、心は宙に舞い上がっていた、
カツ丼小僧は、その後、ハッと我に返り、手を放すと、一歩後ずさりし、
佐々木恭子の前で、右手を垂直に上げ、ローマ式敬礼をしたが、
佐々木恭子は、決して返す事はなかった、
カツ丼小僧は、がっくりと肩を落し、元の位置に戻って、
座布団に胡坐を掻くと、前にあったビールジョッキを掴み、
二口、三口、思いっ切り飲み干し、一人ぼっそりと呟いた、………
カツ丼小僧
「はぁ~~っ、東大女子は、やっぱり難関だ、………
俺の手の及ぶ所じゃないよ、……… 辛いなぁ、……… 」