カツ丼小僧
「あ、すいません、宮内さん、まさか、本人が目の前に現れるなんて、………
うっかり、口を滑らせてしまいました、立つ瀬もありません、」
宮内洋
「ははは、……… まぁ、いいよ、いいよ、
でもさ、V3のコスチュームは、生みの親の石ノ森章太郎先生のデザインだぜ、
それじゃ、お前、尊敬している、石ノ森さんを貶しているようなもんじゃないかよ、
それでいいのかい? 」
カツ丼小僧
「いえね、僕も、当時は、バッタどころか、芋虫のような顔をしていたんで、
一目見て好きになれなかったんですけどね、今では、もう、歴代ライダーの中で、
一番ぐらいに気に入ってます、何故でしょうね? 近代的で重厚で、やたら、
壮麗に見える、……… あまり、こういう言い方はしたくないんですが、
先生は、やはり、時代を先取りしていたんでしょうかね、」
宮内洋
「でも、今の仮面ライダーには、俺はあまり魅力を感じないんだ、
ちょっと、淡泊すぎてね、人間的な、生々しい物がまったく感じられない、
仮面ライダーは、無理矢理、ショッカーやゲル・ショッカーなんかに
体を改造させられた、改造人間なんだけど、
最近のは、改造人間というより、ただのロボットだよ、……… 」
カツ丼小僧
「これも時代の流れなのか、………
なるたけ、綺麗に、スマートに、って言う、事でしょうかね、
僕も、ホント、退屈してます、」
宮内洋
「えっ? お前、何? 50にもなって、まだ、仮面ライダーなんて見てんの? 」
カツ丼小僧
「い、いえ、別に、そういう訳じゃ、……… 」
藤岡弘、
「我々の時代の仮面ライダーには、先生の原作にもあるように、
何か、物凄く悲壮感のような物が漂っていたんだ、………
何と言っても、ごく普通の一般の人間が、ショッカーに捕らえられ、
自分の意志に反して、勝手に体を改造させられてしまったんだからねぇ、………
その心中と苦悩は、計り知れない物があると思うよ、」
宮内洋
「今の仮面ライダーは、女の子と付き合ってたりなんかするんだよ、
ダメだよ、仮面ライダーが、女の子となんか、付き合ってたりしちゃ、……… 」
藤岡弘、
「うわっはっはっはっはっ、……… ホント、羨ましいねぇ、……… 」
カツ丼小僧
「まぁ、確かにそうですね、………
でも、毎回毎回、同じ設定って訳にもいかないでしょうしね ……… 」
宮内洋
「ところで、お前、姓名判断なんか、やっているそうだけど、
俺の名前は、どうなのかな? ちょっと観てくれよ、……… 」
カツ丼小僧
「ええ、僕流の、ふざけた姓名判断でよろしければ、………
藤岡弘、さんの、「岡」もそうなんですが、宮内さんの「内」も、
何か、仮面ライダーの厚い胸板のプロテクターを表しているように見えますね、
2号ライダー役の、佐々木剛さんも、そうなんですが、元来、名前に、
「岡」とか、「剛」の文字が付いている人は、体力的に恵まれた人が多いんですが、
この「内」という文字も、名前の真ん中あたりにつくと、位置的に、
胸や腹のあたりを表しますんで、ちょっと頑強な、肉体を表しているようにも
見えますね、肉体の「肉」が、まさしくそうなんですが、
仮面ライダーの俳優にふさわしい気がします、
それで、次は、「宮」なんですけども、この宮という文字も、
よくよく見てみると、仮面ライダーV3や、風見志郎が、ハリケーンという
バイクにまたがっている所を、正面から見た図案にも見えますね、………
そうです、うかんむりの、上の、ちょんが、人の頭、顔を表し、
その下が、肩や腕を表して、バイクのハンドルバーを握っている形で、
その下の、「呂」の部分が、ハリケーンを正面から見た物です、
最後に、「洋」ですが、右側の「羊」の部分は、プロテクターの仮面ライダーが、
両手を上げて、やや後ろに反り返りながら、ジャンプをしている姿にも見えますね、
「さんずい」は、「海」を表し、つまり、背景は海という訳です、
図案的にも美しい、……… まるで、一枚の仮面ライダーカードのようです、
どうです? これで完璧です、……… 」
宮内洋
「う~~ん、確かに、言われてみれば、そうともとれるけど、
こじつけっぽくもあるな、………
俺には、ちょっと何とも言いようがない、……… 」
そこで、また、宴会場の襖が開き、2人の男女が顔を出した、
おしどり夫婦としても知られる、女優の、高島礼子、高知東生(のぼる)夫妻だった、
高島礼子
「あら、カツ丼小僧さん、こんにちは、
同じ、横浜出身という事で、……… これも何かのご縁です、
よろしければ、私の名前も見て下さい、楽しみですわ、……… 」
高知東生
「おいおい、俺と礼子との相性は、どうなんだぁ、……… 」